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本校の生活

 創立者留岡幸助は「三能主義」すなわち能(よ)く働き、能く食べ、能く眠ることが大切だと説きました。毎日の生活の中で、体を使い、おいしい食事をし、健やかに眠ることで、人間は健全に育ちます。

日課

 起床は午前6時、就寝は午後9時半です。午前中は主に本館を拠点に学習活動が行われ、午後は作業を中心とした総合学習(作業班学習)やレクレーションが行われます。月に一度「朗読会」が行われ、生徒の代表が作文を発表し、校長先生が講評します。
 また、土曜日の午前中にクラブ活動、日曜日の午前中には礼拝が行われます。なお、創立以来、日曜日ごとに行われる礼拝は、本校の精神的土台となっています。

◎日課の一例

06;00 起床・朝作業
 07;30 朝食(各寮ごと)
 08;15 登校・ラジオ体操・朝礼
 08;25 学習(分校)
 12;00 昼食(給食棟)
 13;30 曜日によって作業班学習・レク、学習(分校)
 16;30 夕作業(各寮ごと)
 18;30 夕飯(各寮ごと)
 19;00 入浴・自由時間
 21;30 消灯・就寝



学習

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 学習は、公教育導入により、本館で遠軽中学校と東小学校望の岡分校職員が中心となって指導しています。学年相応の学力に達していない児童が多く、個々人の学力に合わせた忍耐強い学習指導が行われています。また、公教育の対象からはずれた中卒児童に対しては、家庭学校職員が中心となって進路に合わせた学習指導等が行われています。


作業

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 作業は、北海道家庭学校創設当初から取り組まれてきた活動です。
 家庭学校では生活を営む上で必要なことを全て総称して「作業」と呼んでいます。
 自然環境の厳しいオホーツクのこの地では時に大雪後の除雪や屋根の雪下ろし、炎天下での野菜作りや環境整備、厳寒期の山林作業や道路整備等の土木作業と厳しい作業があるのも事実です。しかし、全ての作業は、ノルマとして児童達に課しているものではありません。朝、夕の食事の準備を寮母と行う炊事当番、これも「作業」ですし、牛舎まで、牛乳缶を取りに行く仕事、寮で飼う犬の散歩、これも「作業」の中に入ります。毎日出る洗濯物は洗濯当番がまとめて行い、風呂に入るためには、風呂当番が薪を割り焚いています。これらも「作業」と考えています。
 家庭学校で作業を行うということは、ここで生活するもの皆(職員・児童)が自分に与えられた仕事を責任を持ってやり遂げることであり、『生活する上で必要なことを皆で補い合っていること』を言います。
 私たちは、作業を通して『お互いが協力する事で生活が成り立っている』ということを、伝えようとしています。

 なお、これらの日常的な「作業」の他に、現在は週3日、午後に分校の作業班学習の中で、家庭学校職員と分校職員が一体となって、蔬菜・園芸・酪農・校内管理・山林等の班に分かれ、広大な敷地を舞台に様々な作業活動を行っています。
 年に一度11月に、それぞれの成果を班毎に発表する「作業班学習発表会」が繰り広げられ、『ひとむれ』の「収穫感謝記念号」としてまとめられます。

『ひとむれ』は北海道家庭学校が発行する機関誌です。詳しくはこちらをご覧下さい。

食事と食育

 北海道家庭学校では、食事と食育に特に力を入れています。季節毎の野菜や山菜、牛乳やバターなど、家庭学校の敷地内で収穫された新鮮な食材をふんだんに使った料理を毎日提供しています。栄養士が主催し寮母等が参加する「給食運営会議」によって、月毎の献立表が作成され、給食棟でも各寮でもそれに基づいて調理が行われています。

 まず、寮での食事ですが、平日と土曜日と祝日は朝・晩の2食、日曜日は朝・昼・晩の3食が、それぞれの寮毎に用意され、食されます。寮母が調理し、炊事当番の児童がそれを手伝います。後片付けの食器洗い等は、児童が主体となって行います。寮母は児童と一緒に手を動かしながら、また、対面式キッチンから食事風景を見守りながら、さらには、寮長は寮での全ての食事を児童とともにしながら(同じ釜の飯を喰いながら)、寮の子ども達と心を通わせます。

 次に、給食棟での食事です。平日と土曜日の昼食と月に一度の誕生会の食事(夕食または昼食)が、子ども達と家庭学校職員と望の岡分校教員が一堂に会して、大人も子どもも和気藹々とした雰囲気の中で楽しく行われています。時には法人役員やお客様にも参加していただいています。

 北海道家庭学校の食事と食育について、栄養士と寮母が記した文章をご紹介します。


家庭学校の食事     主任栄養士 伊東 睦子 

食事と食育(伊東).JPG家庭学校の生活の基本に「よく働き、よく食べ、よく眠る」があります。生徒は労働に汗を流し、自分たちの責任を果たして懸命に作業することで達成感や満足感を味わい、感謝の気持ちを持って生活しています。そんな生徒の生活を支えるべく、寮や給食棟では家庭的な食事、可能な限り手作りで食事を提供することを心掛けています。使用する食材も寮や敷地内で穫れた物を活用し、生産から消費までを通し、収穫・いただく事への感謝を感じてほしいと思っています。また、自給作物の利用は、旬の食材・新鮮な食材を取り入れられるので、味がよく栄養価も高く、色彩も良く、自らが携わった作物には少なからず興味が湧きます。学校生活の食事のルールに「配膳された食事は残さず食べる」ということがあり、苦手な食材も口に運ぶ機会が増えることにより、今まで全く食べられなかったものが少しずつ摂取できるようになる目的もあります。

 家庭学校では5つの作業班に分かれ、生徒は活動しています。蔬菜班が野菜を作り、校内管理班が味噌を作り、山林班が山菜を採り、酪農班が飼育管理した牛からの牛乳やバターを使い、寮の食事や給食は勿論、毎月の誕生会や各行事の食事も提供しています。その食事に花を添えるべく、園芸班が育てた花が敷地内に植えられ、時には食卓を飾ります。みんなの力で家庭学校の食事は成り立っていると実感しています。

家庭学校での食事と生活     楽山寮・寮母 千葉 珠季

食事と食育(珠季).JPG 寮での食事は、寮母が調理し、寮長が生徒と一緒に食べるという、一般の家庭で見られる食卓の姿があります。こういった当たり前と思われる日々の営みが、家庭学校に入所してくる子ども達にとって必要な経験であり、大切にすべきであることを日々感じています。

 生徒は毎日勉強や作業で忙しく過ごしています。そんな彼らの姿を日々近くで見ているからこそ、食事の時間を楽しい時間として過ごして欲しいと願います。作り手として、より美味しく、できるだけ出来たての温かい状態で料理を提供できるよう心がけています。

 家庭学校は豊かな自然に囲まれており、春は職員と子ども達で広大な敷地内の山へ行き、たくさんの山菜を収穫してきます。特に採れたての山菜の天ぷらは大人気です。夏は畑でたくさんの野菜を作っており、毎日のように様々な種類の野菜が収穫され、採れたてのトマトやきゅうりを丸かじりしたり、大量のトマトでトマトジュースを作ったりと、新鮮な野菜を味わうことができます。中には山菜や野菜が苦手な子もいますので、様々な調理法で野菜を提供できないかと先輩職員の方に教えていただいたり、調べたりして、バリエーションを増やしていけるよう心がけています。山菜や野菜など、初めのころ苦手だと言っていた子も、自分たちの手で育てた野菜、自分たちが採ってきた山菜となるといつのまにか嬉しそうに食べています。「ここで食べるようになって好きになりました」と言う子もいます。このように感じるのは、ただ単に味のことではなくて、自分たちで一から野菜を育て、収穫し、それを炊事場で調理する人がいて、その過程を共有したみんなで食卓を囲んで食べるからこそ知るものだと感じています。「いただきます」「ごちそうさま」のあいさつや、作ってくれた人に対する感謝の気持ち、譲り合う思いやりの気持ち、食事を通して学ぶことはたくさんあることを、改めて私も家庭学校での生活の中で学びました。

 毎日当番制で牛舎に絞りたての牛乳をとりに行き、一度沸かして冷やした新鮮な牛乳をここでは毎日飲んでいます。毎月1回は手作りパンの日があり、菓子パンや総菜パン、肉まんやピザなどを1日がかりで生地から手作りします。冬はみんなで温かい鍋を囲み、談笑しながら食べる風景はとても微笑ましいものです。

 まともな食事が用意されずにインスタント食品やお菓子でお腹を満たしていたり、家族団欒での食事を経験したことがない子どもも少なくありません。家庭学校での日々の暮らしを通して、本来の家庭の在り方が子どもたちの未来に繋がっていくことを願っています。