ひとむれ
このコーナーでは、家庭学校の月毎の機関誌である『ひとむれ』から一部を抜粋して掲載しています(毎月上旬頃更新予定です)。
職員が、家庭学校を通じて感じたことや伝えたいことを表しています。是非、ご感想をお聞かせください。
※都合により『ひとむれ』本誌と内容が異なる場合がございます。ご了承下さい。
巻頭言
家庭学校の記録システム(二)
12年目の中卒クラス
〈児童の声〉
校長 清澤満
十一月に入り、遠軽町留岡にも何度か雪が舞いました。北海道に長く住んでいながらも寒い冬は苦手で、これから本格的な冬を迎える寒空を恨めしそうに見上げる毎日ですが、十二月になって寒さは一段と厳しくなり、日本海側や岩見沢市など内陸部の一部では大雪に見舞われ、僅か数日で冬本番の様相です。今年二月に札幌を襲った記録的な大雪では札幌発着の公共交通機関が完全に麻痺し、その数週間後の強風を伴った雪は各地で交通網を寸断させました。自然の猛威を改めて思い知らされましたが、今冬はどうか穏やかであって欲しいと願っています。
さて、今年も残すところあと一か月となりました。この一年いろんな事がありましたが、頭に浮かんでくるのは知床観光船の沈没事故や安倍元首相銃撃事件、世界に目を向けるとロシアによるウクライナ侵攻など非常に哀しく残念な出来事ばかりです。このまま今年が終わってしまうのだろうかと思っていたところ、ここにきてサッカーワールドカップでの日本の活躍が私たちの心に元気を与えてくれました。サッカーファンには失礼ですが、グループステージの組合せを見て多くの人が日本の決勝トーナメント進出は難しいと考えていたのではないでしょうか。その日本(FIFAランキング二十四位)が自分たちより格上でワールドカップ優勝経験国のドイツ(同十一位)とスペイン(同七位)に勝利して予想を覆すグループ一位通過を果たしたのです。
勝利した初戦のドイツ戦では森保監督の選手起用や采配、それに応えた選手個々の働きが高く評価されていたと思います。失点を最小限に抑えようとした前半と点数を取りにいった後半では明らかに別物であるかのようにチームが切り替わったと素人の私にも分かりました。前後半とも選手達は監督のゲームプランをよく理解した上で攻守に合わせてフォーメーションを展開し、ゴールを守るとともに少ないチャンスをものにして勝利を手繰り寄せました。
ところが二戦目はFIFAランキングで日本より下位のコスタリカ(三十一位)に敗れてしまい、手のひらを返したように森保監督や選手達に対する心ない批判の声が聞かれました。こういうことはよくあることなのかも知れませんが、本当にサッカーを愛しているファンは目先の勝ち負けに一喜一憂せずに気持ちを切り替え、次戦に向けてエールを送ることに力を注ぐのだろうと思いました。それは、俄(にわか)ファンになって一喜一憂している私がサッカーに詳しい人たちとサッカー談議をしている時にも感じたことです。コスタリカ戦での日本選手の動きを批判的に見ていた自分が、スペイン戦に向けてコスタリカ戦を分析し策を巡らせている真のファンに比べて、なんともちっぽけに感じ恥ずかしく思った瞬間でした。
サッカーはファンのことをサポーターと呼んでいます。何故なのか調べてみると、チーム名に地名を冠したクラブチームが地元と一体になって活躍できるように、ファンはスタジアムに足を運んで応援することをはじめとして様々な形でチームに貢献し、チームを支えるという役どころからそう呼ばれているようです。今回のワールドカップにはサッカー日本代表チーム「サムライブルー」のサポーターとして沢山の人が開催国カタールに駆け付けましたが、その日本のサポーターがとったある行動が大きな話題となりました。それは、開幕戦が終了した後、誰に頼まれたわけでもなくスタジアムなどのゴミ拾いをしていたというものでした。以前、アメリカ大リーグエンゼルスの大谷選手が四球を選びファーストベースに向かう途中でさりげなくゴミを拾ってポケットに入れたことが大きな反響を呼びましたが、今度はサッカー日本代表のサポーターがスタジアムのゴミを拾っていたのです。カタールの記者がゴミ拾いをする理由について質問し「使う前より使った後を綺麗にするのは当たり前」と答えた日本人サポーターの「当たり前」という言葉の意味を知り、その精神に感銘を受けたと紹介されていました。
さらに、ドイツに勝利した日本代表チームが自分たちが使用したロッカールームを来た時よりも綺麗にして去った行動に対しても称賛の声が寄せられました。これは歴史的勝利を収めたドイツ戦の後だけのことではなくその後も続けられ、決勝トーナメント一回戦でクロアチアにPK戦の末敗れ今大会を終えた直後もロッカールームは綺麗に掃除され、中央のテーブルには感謝の言葉と共に十一羽の折り鶴が置かれていたとのことです。
指揮官の采配とそれに応えた選手達の勝利への執念がチーム力を引き上げ大きな力となって表れた今回のワールドカップ。自分たちがやってきたことを信じて最後まで諦めずに闘った日本代表チームの姿に感動を覚えるとともに、選手、サポーターの皆さんが舞台裏で示した「当たり前」の行動を日本人として誇りに感じました。
家庭学校にもサッカーが大好きな子どもたちがいます。スポーツを通じて得られた感動と日本人が異国でとった行動について機会を見て伝えたいと思います。
掬泉寮寮長 藤原浩
五月号のひとむれに、家庭学校の記録システムをリニューアルすることを書かせていただきました。その後の進捗も含め、現状及び今後の展望をご報告させていただきます。
新しいシステムは、十一月一日より試運用を開始しました。アクセスの仕方に戸惑う方もいることを考えて、以前のシステムから五秒後に自動的に遷移するように設定しました。
新しいシステムは寮日誌や年間行事、診察、心理面接、作業班などの予定を登録することで、職員間、施設と分校の間の情報共有することがより容易になっていると思います。さらに、日々記録する寮日誌から個々児童の情報を抽出し、個人毎を週単位にまとめる「経過記録」に出力することがワンクリックでできるようになりました。これまでの経過記録の作成は、児童の情報を個別に毎週記録作成していましたが、その手間を省くことができました。また、心理面接や診察の予定もカレンダー形式で入力することで、視覚的に予定を管理・共有することができるようになり、その結果を入力するとそのまま報告書となります。さらに、寮日誌や経過記録同様、紙決裁から電子決裁に進化しました。最終的には印刷してペーパーレスにはなりませんが、これまで回覧し、押印していた時間が短縮され、また、リアルタイムで日誌を記入、閲覧できたことは大きな前進であると思います。また、完成した寮日誌が短時間で決裁まででき、今までよりも短期間でまとめて印刷してファイルに綴じることができるようになりました。
しかし残念なことに、プログラムの作成及びデータ構築は全て外部の業者に委託しているため、直接にローデータを扱うことができなくなりました。せめてデータベースそのものをダウンロードできるようにすることを依頼しているところです。また、児童の記録や予定の入力などの操作方法が以前と変わっているため、慣れるまでには少々時間を要するかもしれません。汎用のシステムではなく、ほとんどオーダーメイドでできている新しいシステムであるため、これまでに業者と細かく打ち合わせを重ねてようやく形になってきましたが、気づいていない不備などがまだまだあると思います。入力者と閲覧者の双方にとって、より使いやすいものになるように調整していきたいと思います。
移行の時に、過去のシステムで作成していた記録を整理してみました。二〇一五年十月一日より使用開始して丸七年間、延べ百名以上の生徒の日々を綴っています。テキストファイルで印刷にかけると五千ページ以上にも登り、膨大なデータ量となり、これまでの在所児童のデータ情報として最も多いものと思われ、記録を読むと、入所していた児童が家庭学校の日々の生活や作業を通して成長してきたことが確認できます。これらのデータは、家庭学校や自立支援の研究においてまさしく「宝」であると思います。この「宝」が新しいシステムを運用することによって、より整理しやすくなることが期待されます。
児童自立支援専門員 木元勤
今年も、作業班学習発表会が行われ、何とか無事に全員の発表を終えることができました。そのタイミングで、夕方から遠軽の地にも雪が舞い降りてきました。一面銀世界です。昨年も、作業班学習発表会の当日、通勤の途中、いつもの通り道が真っ白だったことを思い出しました。
今年の中卒は、当初1名でのスタートでした。10月中旬に新たなメンバーが入校し、現在は2名です。それぞれに課題を持ちながらも、毎日、元気に頑張っています。
今年の中卒クラスの総合学習のメインは、記念林標識柱の更新でした。実際に作製し、再設置できたのは、「高田林」「月曜会三十周年記念植樹」「大町桂月来校記念」「牧野林」でした。新規に作成したのは、「服部林」です。そのほかに、老朽化で更新したのが、「礼拝堂」の表示板、「平和山山頂」の案内板です。今、準備を進めているのは、「国沢林」です。
「高田林」「服部林」の2本だけは、木材加工業者にお願いし、防腐圧縮加工を施してもらい、新規に購入してもらいました。
ここからが中卒クラスの作業となります。この時は、R君一人だけでした。白ペンキを塗ります。乾いてから題字を書きます。題字は掬泉寮の寮母の美香先生に書いていただきました。複写紙で写し取り、「服部林」は、彫ってから黒ペンキで書き込みました。「高田林」は彫らずに書き写しました。黒ペンキで2度塗りをし、乾くのを待ち、油性のニスを、これも2度塗りをして完成です。
3本目からは、最初の2本で学習した経験を活かし、木工教室横にある吹き抜け小屋に保管していた古い柱材を選び、木工教室の丸鋸で切り、自動カンナで表面をきれいにして中卒教室に運び込みます。そこで、ポリッシャーをかけ表面を仕上げます。防腐剤(クレオソート)を塗り、乾いたら白ペンキを塗り、題字を書きます。そのあとは、同じ工程で完成です。題字は、中卒クラスに関わる3人がそれぞれの字で書くことにしました。「大町桂月」は、書道・国語・社会担当の栄先生、「牧野林」は、中卒生R君、「月曜会三十周年記念」は私と担当を決めました。それぞれ、渾身の作(?)が完成しましたので、機会がありましたら来校の折に見ていただきたいと思います。場所への案内は、私たちが致しますので気軽にお声掛けください。
「平和山山頂」の案内板の再設置後、何度か事件がありました。毎月5日は幸助先生の月命日です。早朝、平和山に登り、手を合わせます。R君から、「案内板が傾いていたよ」との報告があります。確認しに行くと、まっすぐに設置したのに傾いています。それが何度か続き、最後は倒れていたとのこと。平和山に登る者のいたずらとも思えず不思議に思っていました。このころ、熊の目撃情報があり、稲田先生が子熊の動画を撮ったと聞き、見せてもらいました。子熊が、柏葉寮の畑の横の道を礼拝堂に向かって必死に走って逃げていく姿が映っていました。おそらく、案内板にいたずらをしていた犯人は熊だったようです。
博物館周辺の桜の支柱の更新もしました。今年は、支柱を作成した際、裏側の目立たないところにRの頭文字を書かせました。下草刈りも、例年より少なかったですが行いました。桜も苗木が成長し、花を咲かせるようになりました。5年後が楽しみになりました。(なぜ5年後なのか根拠はありません。なんとなく。)
漢検、ワープロ検定の時間も設けていて、R君は両方とも見事合格しています。
10月から、新しくS君が加わり、2名になりました。S君はパソコンが得意で、機械いじりが好きだそうです。二人になったので、時間割に「体育」を加えました。卓球が得意というので、冬の間は「卓球」「バドミントン」「フットサル」を予定しています。
もちろん主要5科目の授業もありますが、次の機会に詳しく報告することにして今回は終わります。
石上館 中三 S・掬泉寮 中三 M
「進学に向けて」
僕は十月の末に学校見学へ行きました。学校見学をして思った事は明るい雰囲気の学校だなあと思いました。廊下を歩いているとその学校が作っているキーマカレーのパッケージがあって、ここではこんなものも作っているのかと思いました。
高校に入ったら生活科学科に入り食品製造を学びたいと思いました。それ以外にも福祉や農業生産の勉強もあるのでいろいろなことを学びたいと思います。まだまだ知らない事が自分にはあるので色々な事を高校に入って知りたいです。
これから高校に入学するまでの残りの期間何を頑張るか、何を直していくかを考えました。
まず一つ目。最近勉強をする時に集中が切れやすいので集中出来るようにすることです。なぜなのかというと、家庭学校では4時間目までの日があるものの、高校では6時間目までがあたりまえだからです。4時間の学習で集中が続かないのならば、6時間だともっと続かないと思ったからです。やりたくない学習でも少しは集中を続けられるようにしたいです。
二つ目はコミュニケーションのしかたです。誰かが自分に話しかけてきた時にすぐ返事をしてしまうので少し間をあけながら返事をしたり話を出来るようにしたいです。その他に言葉をちゃんと選んで発言することです。たまに自分で意味が分からない言葉を使ったり、話をしている時にその話にまったく関係の無い言葉をいきなり言わないように気をつけたいです。
三つ目は興奮しすぎないことです。少し興奮している時に気づいたらおさえられるけど、気づこうとせずにほっておくとおさえられなくなってしまうので気をつけたいです。
これらの事は高校に入る時に絶対必要な事で出来ていない事なので頑張るために書きました。これから四ヶ月の間に直せる所は直す、頑張る所は頑張りたいと思います。まだ作業班や学習、行事もたくさんありますが精一杯頑張ります。
二度の作業班学習発表会を通して
僕はこの家庭学校に来て約一年三ヶ月になります。その間の二度の作業班学習発表会を通して思ったことや感想、学んだことを書きたいと思います。
まず、一度目の発表会で思ったことは少し不安だなということです。自分は大人数の前ではあまり話したことがなく、堂々ともしていられなかったので不安でした。ですが、いざ本番で自分の番になると気持ちがのってきてしっかり堂々と話すことができました。この時、とても楽しいなと思いました。
次に二度目の発表会で思ったことはきんちょうするということです。前回のように不安はありませんでしたがきんちょうしました。
しかし今回も話し出すと、とても気持ちがのってきて、しっかりとハキハキ話すことができました。
次に二度の発表会を通しての感想ですが、それはとても楽しかったということです。とても話すのが楽しくて話がのってきたり、ハキハキとていねいに話すことができるようになったり、質問にもどうにかアドリブで答えられるようになりました。ですがやはり失敗したなと思う所もありました。それは原こうの読み間違いをしたことです。指し棒と原こうを読む両立が難しく、読んでいる所がずれてしまいました。でもこれも、次の課題だと思ってがんばりたいです。
最後に学んだことを書きたいと思います。まず一つ目は、人前で話すことの楽しさです。今までとは大きく考えが変わりました。
次に二つ目は、計画性の大切さです。これは準備の時に模造紙や原こうを決められた期間で計画的に終わらせなければいけません。なので計画性が大切だということです。
この二点をこの二度の作業班学習発表会で学びました。