ひとむれ
このコーナーでは、家庭学校の月毎の機関誌である『ひとむれ』から一部を抜粋して掲載しています(毎月上旬頃更新予定です)。
職員が、家庭学校を通じて感じたことや伝えたいことを表しています。是非、ご感想をお聞かせください。
※都合により『ひとむれ』本誌と内容が異なる場合がございます。ご了承下さい。
巻頭言
クラブ活動について
校長 仁原正幹
北海道家庭学校では、運動会や園遊会などのいろいろな行事や散髪などの機会に大勢の皆さんにご来校いただき、子ども達に親しく声をかけていただいています。ご馳走を作って一緒に食べながら子どもの話に耳を傾けてくださったり、一生懸命走っている生徒に大きなご声援をいただいたりしており、そのようなときに子ども達が、自分のことを大事にしていただいている、大切に思ってくださっている、社会の一員として尊重してくださっているということを実感できる、そのことが何よりもありがたいことだと、私は思っています。
北海道家庭学校の子ども達は、ここに辿り着くまでに家庭や学校や地域、あるいは前に居た施設で辛い思いをたくさんしてきています。彼等の特性から、誤解されたり、虐げられたり、仲間外れにされたりの連続で、その反動で反社会的な暴力行為に出たり、暴言を吐いたり、無視したり、あるいは非社会的に自分の殻に閉じこもって引き籠もり状態になったりしてきました。おまえはダメなやつだとか、要らないから出て行けなどと言われて、自分は価値のない人間だと思い込まされているので、自尊感情が著しく低くなっています。どうせ俺なんか…、別にどうなってもいいや…と、自暴自棄になって、目立つために何かしでかそうということになりがちです。
社会的養護の対象になる子ども達、特に児童自立支援施設の子どもの中には、なかなか人の気持ちがわからない、推し量って感じ取ることができない、いわゆるコミュニケーション能力に劣る子どもが大勢います。被虐待経験や発達障害による精神的な問題が原因として考えられています。
そうした子ども達に、普段家庭学校で仕事をしている施設職員や分校教員以外の人から、即ち大勢のボランティアの皆さんや実習先の支援者の方々などから温かい言葉をかけていただくことや、時には叱咤激励していただくことが、子ども達が「人の気持ちがわかるようになる」ために最も有効なことだと、私は考えています。
子ども達が将来「社会の一員として自立していける」ためには、「人の気持ちがわかるようになる」ことが必須の要件であり、大勢の皆様とのそうした「心」の触れ合いが、子ども達にとっての最大の贈り物なのだろうと、そんなふうに私は考えています。ボランティアや支援者の皆さんに改めて心より感謝申し上げます。
楠 哲雄
家庭学校のクラブ活動は五月から十月の六カ月間、毎週土曜日、午前中の二時間を利用して行われる。その年により実施される種目は若干変更するが、今年度も開始前に子ども達にクラブ活動に対するアンケートを実施し、希望をとって決定し、今年度はバトミントン、陸上、合気道となった。最初の三回は体験入部とし、関心のあるクラブに参加し、職員からクラブ活動の活動内容や方針等の説明を受け、その後、六月から本格的な活動に入る。
合気道部は、唯一、外部の方に指導して頂いている。遠軽は合気道ゆかりの地の一つで、合気道開祖植芝盛平と校祖留岡幸助の交流があったという縁から二十年前から「森の学校道場」で師範とお弟子さんの二人で子どもの指導をして頂いている。最終日には昇級試験を実施して頂き全員が見事七級に合格している。
陸上部は辛く自分との戦いを強いられる種目のため、日によって短距離から長距離、野外走と、飽きのこない練習メニューを組む。短距離では、最初に100mのタイムを計り、スタート練習やフォームを矯正した後 もう一度タイムを計り、子どもにちょっとしたコツや練習次第で誰でも早く走れることを知ってもらう。その取り組みの中で人の助言を素直に受け入れる大切さを理解してもらおうとした。また、長距離の練習は、持久力を高める練習を通して自分に勝つ心、諦めない心を作り、将来の困難に挫けない心を、体を通して理解してもらう活動をした。
バトミントン部は、毎回ウォーミングアップから筋力トレーニング、基本練習と入り、最後に少しだけゲームをする。一般のクラブ活動を経験したことが少ない子に対して中学校の部活をイメージして行った。部活を経験したことのない子に部活を味わい、楽しむことを第一に考えた内容であった。
家庭学校は作業中心の日課の中だが、その中で毎週水曜日午後のレクリェーションの時間とクラブ活動の時間はスポーツで汗を流せる貴重な時間である。その貴重な時間に思う存分楽しんでほしいというのが職員共通の思いである。子ども達もクラブ活動に対して大きな期待を持って参加するので、職員は子どもたちが意欲を高く持って全力で取り組めるよう、また、終わった時には大きな満足感や達成感が持てるよう練習内容に創意工夫し、自ら一緒に参加して情熱を持って指導に当たっている。
(掬泉寮:寮長)