ひとむれ
このコーナーでは、家庭学校の月毎の機関誌である『ひとむれ』から一部を抜粋して掲載しています(毎月上旬頃更新予定です)。
職員が、家庭学校を通じて感じたことや伝えたいことを表しています。是非、ご感想をお聞かせください。
※都合により『ひとむれ』本誌と内容が異なる場合がございます。ご了承下さい。
巻頭言
八月一六日夕食
夏季残留行事をとおして
展示林種子採取体験会
特別文化体験
音楽の力
校長 仁原正幹
秋晴れの九月二十四日、北海道家庭学校は全校生徒と役職員、さらにはお客様にも参加していただき、百三年目の創立記念日をお祝いしました。第一部は十一時から禮拝堂で、第二部は正午から給食棟で、皆で楽しく充実した時間を過ごすことができました。因みに昼食メニューは創立記念日定番の赤飯、鮭の照焼、金平、味噌汁、浅漬け、果物でした。加えて自家製の紫蘇ジュースも振る舞われました。
以下、禮拝堂での校長講話の概要を記させていただきます。
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北海道家庭学校百三年目の創立記念日のお話をします。皆さんの右側に掛かっている写真は、いつもお話ししている家庭学校を作った人、校祖ともいいますが、留岡幸助先生です。幸助先生がこの遠軽の地に、一九一四年(大正三年)に北海道家庭学校を創立されてから、今年で百三年目になります。北海道家庭学校には長い歴史と素晴らしい伝統があります。
今日のこの創立記念のお祝いには、普段家庭学校で暮らしている生徒の皆さんと我々職員のほかにも、家村理事長先生をはじめいつも家庭学校のためにお力添えをいただいている多くの皆様にも参加していただいています。お忙しい中ご出席をいただきまして、誠に有り難うございます。
今日は創立記念日なので、少し歴史を振り返ってお話ししたいと思います。とは言っても、私は家庭学校ではまだ三年半の経験しかありません。また、限られた時間の中で百三年間の歴史を詳しくお話しする訳にもいきません。それで今日は留岡幸助先生の大事な教えの一つである『三能主義』について、皆さんに改めて少し詳しくお話ししたいと思います。
幸助先生は北海道家庭学校開設の翌年、一九一五年(大正四年)に、『三能主義』という考え方を『人道』という当時の家庭学校の機関誌に発表されました。『三能主義』とは、この紙に書かれているように「能(よ)く働き・能(よ)く食べ・能(よ)く眠る」という三つの「能(よ)く」をまとめた言葉です。「能く」という字は「良い悪い」の「良く」ではなく、「能力」の「能(のう)」という字を書きます。「十分に」とか「上手に」という意味を表す漢字です。
家庭学校での暮らしの中で、皆さんは毎日、朝作業・夕作業に励んでいます。それから、月曜と火曜と木曜日には、午後の学校日課の中で「作業班学習」を行っています。家庭学校や望の岡分校の先生方とともに本格的な作業に取り組んでいます。家庭学校の生徒は、毎日「能く働く」生活を送っているんですね。
また、家庭学校でみんなが栽培した野菜や飼っている牛の牛乳やバターなど新鮮で栄養価の高い食物を、好き嫌いせずにお腹いっぱい食べたり飲んだりしています。食べるときの姿勢やマナーなどにも留意しながら充実した食生活を送っています。毎日「能く食べる」生活を送っているんですね。
さらには、寮での規則正しい日課の中で、早寝早起きの良い習慣が身につき、日中の作業や運動や勉強に一生懸命取り組んでいるので、夜は心地よい疲れを覚えぐっすり「能く眠る」ことができます。そういう健康的な生活を送っています。
このように、皆さんは家庭学校の根本精神である『三能主義』というものを毎日しっかりと守りながら、勤勉で規則正しく健康的な生活を送っています。そしてそのことが、将来皆さんが社会で自立して生活していくために必要な力を養い、君達の心と体の大きな成長につながっていくものと、私は考えています。
「能(よ)く働き・能(よ)く食べ・能(よ)く眠る」ということは、言わば当たり前の生活です。その当たり前の生活を、毎日毎日きちんと続けることが人間にとって大変大事なことであると、百年以上前に留岡幸助先生は考えられたのです。
幸助先生の『三能主義』の精神は、創立以来百三年間、北海道家庭学校の確たる伝統として、しっかりと受け継がれてきました。これからもこの『三能主義』を大事な教えとして、家庭学校の素晴らしい伝統として、忠実に守っていきましょう。
さて、今日私は皆さんに三つの「能(よ)く」に加えて、もう一つの「能(よ)く」を提案したいと思います。それは「能(よ)く考える」ということです。毎月五日の幸助先生月命日の平和山登山のときや、日曜日の校長講話などでも、時々皆さんにお話ししているので覚えている人もいると思います。どんなに作業や仕事ができても、どんなに勉強ができて学業成績が優秀であっても、周りの人と協調して仲良くしていけなければ、家庭学校を巣立ってから仕事も学校も結局長続きしません。いつも「人の気持ちを考える」ことがとても大事なことだと思います。
どうしたら人の気持ちがわかる人になれるか、周りの人と仲良くできるか、お互いに助け合っていけるかなどのことを、相手の立場に立っていつも考えていることが大事だと、私は思います。みんなはそれぞれいろんな性格を持っています。ちょっと人に不快な思いをさせてしまうような癖があったりして、人間関係がうまくいかなくなるような失敗をしたことがこれまでもあったと思います。自分の特性、性格や癖などをいつも意識しながら、どうしたら周りの人と仲良くでき、人の気持ちがわかるようになるか、そのことを毎日毎日「能(よ)く考えながら」生活してほしいと、私は願っています。
北海道家庭学校は百年の大きな時の流れを経て、新しい世紀に入っています。新世紀の北海道家庭学校は『三能主義』プラスワンの『四能主義』を大事にしていきたいと、この頃私は考えています。
今日は北海道家庭学校の長い歴史の中のほんの一端に触れただけですが、これまでの百三年間、大先輩の先生方や生徒たちの営々とした努力、頑張りによって、北海道家庭学校の歴史と伝統が形作られ、いろいろなものが財産として伝わって、今日(こんにち)私たちがここで勉強し、生活できていることを、皆さんに知っていただきたいと思っています。「暗渠の精神」や「難有り」などの素晴らしい伝統と大事な教えを皆さんに繰り返しお話ししているのはそのためです。
これからの家庭学校の歴史を作り、新たに伝統を守り育てていくのは、今ここに居る私たち、生徒と先生方です。創立記念日に当たり、そのことをしっかりと心に期したいと思います。
今日はこのあと給食棟でお客様とともにお昼ご飯をいただきます。その昼食会の中で皆さんにドローンで空撮した映像を見てもらうつもりで、蒦本先生に準備をしていただいています。皆さんには初めて見てもらうことになりますね。家庭学校の雄大な敷地の様子や全校作業の植林風景、運動会や相撲大会の様子などが上空から映し出されています。禮拝堂を真上から見下ろした迫力のある映像も見られるはずです。
また、午後からは、各寮毎に博物館の見学が予定されていると思います。今日は幸いに新しい博物館に力を注がれた佐藤先生もお見えになっていますので、家庭学校の歴史などを詳しく教えていただけると思います。博物館にはそのほかにも、日露戦争のときのステッセルのピアノというものがありますし、黒曜石でできた我が国最大級の鏃(やじり)も展示されています。せっかくの機会なので、能く考えながら勉強してみてください。
今日は北海道家庭学校の百三年の歴史を振り返りながら、皆さん方一人ひとりがもう一度自分を見つめ直して、ここで過ごす意味をしっかりと考える、そういう一日にしてほしいと思います。
創立記念日のお話を終わります。
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最近私が勝手に唱え始めた『四能主義』ですが、何と読んだらいいのか迷う方も多いと思います。「よんのうしゅぎ」だと「さんのうしゅぎ」と響きが似ていて収まりが良いような気もするのですが、果たして日本語の音感的にはどうかな…と、些(いささ)か悩むところです。
それで辞典などで調べてみたところ、『広辞苑』に「四能(しのう)」という言葉が載っていました。「しのう」という読みが古くからあるようなのです。ただし、この場合の「四能」の意味は全く違います。「四つの芸能。琴・棋・書・画をいう」とありました。四つの芸術、即ち琴・囲碁・書道・絵画のことで、士君子の嗜(たしな)みのことのようです。参考まで。
楽山寮長 千葉 正義
「ただいまー、○○児相に行って○○を連れて帰ってきたよ。おぉ、みんなも帰ってきたかー、おかえり。みんな無事に帰ってきたんだな、当たり前のことだけど偉いぞ、うんうん。お、○○は少し見ない間にちょっとだけおっきくなったんでないか。○○は少し日に焼けたな、どこに行って来た。○○は寝てばっかりいたって。でも弟の面倒はみたか、偉いぞ。○○は元気ないな、お家が恋しくなっちゃったか。そうか、じゃあ早く帰れるように頑張って生活しような。おぉ、○○はそこにいたか、みんなのために風呂を焚いて待っててくれたんだな、ありがとう。残留行事楽しかっただろう、良かったなー、先生方に感謝だな。
よし、それじゃあみんな揃ってるし晩ご飯にしよう。今日はカレーだ、久しぶりに珠季先生の作ったカレーだぞ、いただきます。
それで、どうだった今回の帰省は。ちゃんと成長した姿を見せられたかい。先生なんてさ、休み中あんまり動かなかったから二キロくらい太ってしまったぞ。これから頑張って作業しないとな。寮の周りも畑も草ボウボウだ、みんな頼むな。
うん、先生は休み中何してたかって。先生はな、今回大阪と京都に行って来たぞ。ところで○○は新千歳空港に行ったかい。先生六日に飛行機に乗ったんだけど、そうか、○○は別な日に行ったのか、会ったりしてって珠季先生と話してたんだけど、別な日だったか。
大阪では大阪城に行ってさ。中に入ると、エレベーターで上まで行けるんだよ。一番驚いたのはさ、江戸時代にエレベーターってあったんだな。え、そんなわけないって。わかってるよ、冗談だよ。中が奇麗に改築されてて、博物館みたくなってた。豊臣秀吉とか織田信長とか、歴史がわかりやすく解説されてて面白かったぞ。歴史が苦手な○○にはぜひ行ってほしいな、楽しく学べて成績も上がるぞ。
その後串カツを食べてさ、大阪には『新世界』って場所があってさ、なんか独特な雰囲気で名物の串カツ屋がいっぱいあってね、美味いんだよ。○○は揚げ物好きだもんな、食べてみたらいいよ、串カツ。みんなも大人になったら行ってみー、彼女でも連れてさ。でも彼女と行くならUSJが良いか。今回行って来たんだけど、台風が直撃してね、大雨で大変だったよ。でもせっかくだから、全身ずぶ濡れになりながら遊んだよ。○○の好きなキャラクターがいてさ、一緒に写真撮ってきたよ、あとで見てくれるか。
次の日は京都に行ってね、最高気温が三八度。北海道じゃ考えられないよな。大雨の次は猛暑でもうぐったりだよ。清水寺に行って、おみくじを引いたら凶が出てね。みんな笑うなよ、最悪だよな、せっかく行ったのに。でもまぁ俺だってこんなこともあるよ、気にしない。みんなも小さいことでくよくよしてたらだめだぞ。
前回京都に行ったのは高校の修学旅行だから十五年以上前。何となくだったけど当時のことを思い出して、懐かしかったなぁ。○○と○○は今年度受験だもんな。高校に入ったら修学旅行で行くかな、京都。よし2学期から頑張って勉強しないとなぁ。楽しい高校生活が待ってるぞ。そのために今から努力しなければならないんだ。
今回残ることになった○○はその頃何してた。残留行事で野球を見に行ったのか。そうか、初めてだったのか野球は。どうだった生のプロ野球、ホームランボールは取れたかい。サッカーも見たんだって。あとは映画に船釣りにサイクリング、俺の旅行よりも楽しかったんでないか。良かったなー、感謝の気持ちを忘れてはいけないぞ。
あとは墓参りだな。先生もちゃんとお墓参り行ったぞ。そうか、○○も従兄弟とお墓参り行ったか。お盆だから親戚みんな集まって楽しかったか、良かったな。ちゃんとお参りしてきたか、きっと見てくれてるぞ、○○の成長を。
カレーのお代わりはどうだい、たくさん食べな。どうだ、久しぶりの珠季先生のご飯は美味いだろ。でもわかってるぞ、みんなのお母さんの作ったご飯が一番だよな。そりゃあそうだ。
それにしても、今回、先生も久しぶりに長い休みを貰って遠くへ行けて気分転換になったよ。でも休み中は珠季先生とみんなのことを話すことが多かったな。○○は今何してるかな、○○は頑張っているかな、旅先で何かあるとみんなに見せて、聞かせてあげたいなとかさ。そりゃあ気になるさー、だっていっつも一緒にいるんだもん。先生たちの生活の一部だよ。だからやっぱり寮に戻ってみんなの顔を見ると落ち着くよ。そしてみんなも楽しかったようで安心してるよ、うん。
とにかく、みんなもリフレッシュできたようで良かった良かった。でも、今回の帰省、残留が良いものになったのは、みんなが普段頑張って生活していたからだぞ。普段から一生懸命やっていたら、毎日の何気ない些細なことでも嬉しく、楽しく、そしてありがたく感じることが出来るんだ。だからみんなそれを忘れてはいけないよ。家族の方とか、行事でお世話になったたくさんの人たちに感謝して、また明日から頑張っていこうな。そしたら今回と同じように冬の帰省も良いものになるし、お家に戻った時にしっかりやることにも繋がるし。みんなで気合入れていこう。だいじょうぶ、二学期なんてあっという間、すぐ冬休みだよ。ふぅ、お腹いっぱいだ。よし、そろそろ終わろうか。」
「姿勢を正しくしてください。ごちそうさまでした。」
児童自立支援専門員 竹中大幸
今年も子どもたちにとって貴重な夏休みがやってきました。例年のことではありますが、夏休みに帰省のできない児童生徒は少なからずいます。それぞれ目標を持って頑張って生活してきても、家に帰ることができない子ども、問題行動をおこしてしまった子どもや、短期間の帰省の子どもは、夏休みの大半を施設に残って過ごすことになります。
今回、それらの子どもに少しでも楽しい思い出ができるようにスポーツ観戦、遊園地、映画鑑賞、海釣り、サイクリングなどいろいろな残留行事を考えてみました。職員の休みの関係で、私自身全ての行事には参加できませんでしたが、後半六日間の行事に参加することができました。
後半の行事としては、海釣り、サッカー観戦、サイクリング、温泉入浴を盛り込んでみました。行事の中で最初に体験したものは海釣りでした。残留行事の中には毎年厚意で船を出してくださる方がいて海釣りがあるのは知っていましたが、参加するのは勤務五年目にして初めてで、カレイ釣りを経験できました。
このときは家庭学校の職員だけでなく、望の岡分校の槇先生と高松先生にも同行していただき、槇先生には釣り竿やエサなどの準備までしていただいて大変お世話になり助かりました。参加した生徒は一人で、カレイは釣れなかったみたいですが、ホタテ貝や他の魚を釣り上げていました。後半は早朝に起きたためか船上で気持ちよくなって寝ていましたが、結構楽しめた様子でした。目当てのカレイはもちろんのこと、釣った魚は寮に持ち帰って調理してもらい、美味しくいただきました。
次にサッカー観戦としては、コンサドーレ札幌とヴァンフォーレ甲府の試合を札幌ドームまで観に行きました。試合開始二時間くらい前に着きましたが、すでに大勢の人が集まっていました。試合結果は一対一の引き分けでしたが、コンサドーレのサポーターと応援の熱気で盛り上がり、大変おもしろい試合で満足しました。
最後にサイクリングと温泉入浴です。上士幌町のぬかびら源泉郷に行きました。糠平湖の周りをレンタサイクルを使って周り、汗をかいた後に温泉につかりました。少し曇っていましたが雨が降らなかったのでサイクリングにはちょうど良く、温泉も楽しんでもらえたようです。
一般家庭の子どもの夏休みならば家族と外出したり、親戚が集まったりと賑やかに過ごすことが多いかと思います。そんな経験をしないで、施設職員、分校教員とともに過ごすことをどう思っているかは分かりませんが、外出のたびにお弁当を作ってくれたり、各種行事に協力、参加をしてくれたりといった、その子らを見守る大人の目があることを忘れずに、感謝の気持ちを持って楽しんでいてくれていたらと願っています。
副校長 軽部晴文
遠軽町が中心となって、家庭学校内の展示林活用の一環として、外国種の種を採取し、苗木に育てた後に、再び家庭学校の敷地内に植樹を行う計画を進めております。そして先月家庭学校生を対象に種子採取体験会を開いて頂きました。
当日会場には高所作業車が持ち込まれ、先ず、専門指導員の方から、「松ぼっくり」についての説明を受け、遠くに種子を飛ばす仕組みを学ぶことができました。その後交代で係の方と一緒に作業車に乗り込み、種子採取を体験しました。
立木からの採取も高所作業車に乗ることも初めての体験で、生徒には印象に残る体験会だったようです。
採取された種が育ち、再び家庭学校に第二世代の展示林ができる頃に、壮年期を迎えた生徒が訪問してくれることを願いたいです。
主幹 楠美和
北海道日本調理技能士会の枝松茂伸会長さんから、子ども達に日頃体験できない日本料理の職人さんによる実演を通して日本文化に触れさせ、また、職業体験の一環として調理師という職業に触れさせてあげたいとのお申し出をいただき、九月一〇日・日曜日の昼食のときに特別文化体験の会を実施していただきました。
当日は札幌などで料理長を務められている方々が五名来校され、家庭学校の食材を使った天丼、きのこ汁、トマトの密煮、浅漬けを料理してくださいました。子ども達はプロがてんぷらを素手で揚げる姿や見事な包丁さばきなどを間近で見せていただき、美味しいたくさんのごちそうをいただきました。
食事が終わると、同行されたプロフライタイヤーの備前貢さんを囲んで毛針のつくり方のデモンストレーションを興味深く見せていただきました。子ども達は手作りの毛針をいただき、楽しい時間を過ごさせていただきました。
貴重な機会をいただきましたことと、枝松様はじめご来校いただきました皆様とのご縁に感謝いたします。
望の岡分校・教諭 槇正美
望の岡分校に赴任して、早、六カ月が過ぎました。分校での生活にもだいぶ慣れて、子どもたちとも自然に親しく接することができるようになりました。私は分校で、小五から中三までの音楽を教えています。また、中一の基礎英語と中一から中三の技術・家庭も教えています。普段の授業は、人数は少ないながらも、本校で行っている授業とほとんど変わりなく、みんな授業態度もまじめで一所懸命に取り組んでいます。もちろん、時には集中が途切れることもありますが、授業の一場面だけ見ていると、「なぜ、この子たちはここにいるのだろう?」と、来たばかりの頃は思っていました。
そんなある日、小五の音楽の授業で、「剣の舞」という曲を鑑賞した時です。子どもたちが、急に席を立ち音楽室を動き回りだしました。私は、ビックリましたが、何も言わずにちょっと様子を見ていました。曲が終わると、子どもたちから、「先生、もう一度曲を聴かせて下さい。」と頼まれました。私は、「ちゃんと聴いているの?」と聞いたら、「ちゃんと聴いていますよ。」と言ったので、「それじゃもう一回聴かせるよ。」と言って曲を聴かせました。結果は一回目と同じでした。確かに、一般的には、音楽鑑賞中に音楽室を動き回るようなことはしませんが、曲の雰囲気を感じ取って、全身で音楽を聴いている姿?には、圧倒されました。
中学生の授業では、初めの頃は、歌を歌ってもあまり声が出ていませんでしたが、毎回、発声練習を繰り返すうちに、少しずつ声が大きくなってきました。
私が授業で、特に心がけていることは、とにかく一人ひとりをできるだけ褒めるようにすることです。また、褒める時は、口先だけの言葉ではなく、気持ちを込めて褒めるようにしています。あと、ついつい言いがちな「ダメ」と言う言葉を、できるだけ使わないようにもしています。「否定よりも肯定」を心がけていますが、うっかり「ダメ」の言葉が出てしまうことがあるので、気をつけたいですね。
子どもたちの中には、音楽好きが多くいて、音楽の授業前や長い休み時間には、音楽室でピアノやドラムセットを練習したりしています。最近では、ピアノ曲やコマーシャルでよく聴く曲の楽譜を希望する生徒がいたので、用意してあげると、熱心に個人練習をしたり、リズムを教えて欲しいと頼まれて教えてあげたりすることがありました。音楽室が大賑わいになることが増えてきて、とても嬉しく思っています。これからも、音楽を通して、子どもたちのここでの生活が、充実した価値のある日々になることを願い、微力ですが力の限りベストを尽くしていきたいです。