ひとむれ
このコーナーでは、家庭学校の月毎の機関誌である『ひとむれ』から一部を抜粋して掲載しています(毎月上旬頃更新予定です)。
職員が、家庭学校を通じて感じたことや伝えたいことを表しています。是非、ご感想をお聞かせください。
※都合により『ひとむれ』本誌と内容が異なる場合がございます。ご了承下さい。
巻頭言
輪休寮寮母として感じること
心理教育について
新しい教室ができて
ひとむれ会の理事長に就任して
新しい教室で勉強することになって
秋季のマラソン大会を走ってみて
校長 仁原正幹
九月二十四日は百一年目の創立記念日ということで、去年の百周年記念の盛大な式典・礼拝とは趣を異にした内輪だけの創立記念式を礼拝堂で執り行いました。望の岡に聳え立つ築九十六年の礼拝堂は北海道家庭学校のシンボルであり、この春北海道の有形文化財に指定されたことは既にご紹介したとおりです。
礼拝堂にはその十日前の十四日にグランドピアノが搬入されたばかりで、今回の創立記念式はそのお披露目も兼ねて行うことになりました。このピアノは札幌在住の高野倫行さんという方から寄贈していただいたもので、札幌から遙々遠軽の家庭学校の礼拝堂まで運んでくださいました。遠軽町内の丸瀬布には、国産ピアノの響板(共鳴板)、鍵盤板の三分の二を製造している木製部材メーカーである北見木材の工場があり、特産のアカエゾマツを加工してピアノの重要部位を製造し、それをピアノのメーカーに提供しているようですが、今回いただいたこのグランドピアノも、生まれ故郷に帰ってきたのかもしれないと想像しています。
元々礼拝堂には、家庭学校の卒業生の方から贈られたロジャースオルガンという荘厳な音色を奏でる大がかりな楽器装置もあり、記念式ではこのロジャースオルガンとグランドピアノの両方を、かつて本校で音楽講師をされていた荒木美香さんに演奏と伴奏をしていただきました。お陰様で大変感動的で素晴らしい記念式となりました。
礼拝堂にはその他にも歴史を感じさせるオルガン二台とアップライトピアノ一台が据え置かれていましたが、今回のグランドピアノ搬入に合わせて、この三台を昨年リニューアルしたばかりの博物館に配置換えしました。歴史的な価値をより多くの皆さんに実感していただくためです。実際に音を奏でることも可能です。
因みにこのアップライトピアノのほうは、ステッセルのピアノと呼ばれる逸品で、日露戦争の戦利品としてのエピソードも伝わる歴史的に大変貴重なものです。かつて作家の五木寛之さんが全国に四台現存するというステッセルのピアノを探し求めて北海道家庭学校にも取材に来られ、その成果が『ステッセルのピアノ』という作品として結実しています。
さて、創立記念式でも子ども達に話したことですが、百一年の間にいったい何人の生徒が在籍したのかということです。実は生徒には最初の一人から順番に通し番号が付いています。一番新しい生徒は九月十日に入所した小学三年生で、番号は二四八九番です。あと十一人で二千五百人に達します。今年度中に二千五百番の生徒が誕生するかもしれません。
児童生活支援員 藤原美香
昨年の4月から家庭学校で働きはじめ、2年目に入ってやっと生活に慣れてきたと感じる今日このごろ。寮長寮母が休みの日に寮生を預かる輪休寮の寮母としての生活が始まり、生徒の名前を覚えるところから、家庭学校の生活や寮生活について覚え、身につけることに精一杯の毎日でした。昨年はその中で生徒一人一人と関係を作ることができず、ただただ食事を作るだけの人であったように思います。その中でも、なんとか関係を作っていこうと輪休で子どもたちを預かる際に必ずしていることがあります。
それは、一緒に食事をとることと、日記へのコメントを書くこと、就寝前の集まりで子どもたちと一緒に1日を振り返り良かったこと、気を付けていくことを話すことです。生徒と一緒に過ごす時間が少ない中、どうしたら関係を作ってい
けるのだろうかと考えた結果です。
朝夕の食事を作ったあとは一緒の食卓に座ります。毎回、今回の味付けは子どもたちの口に合うだろうか、今日は味が薄かった、濃かったな・・・など思いながら食事をしています。時折、子どもたちに味の評価を求めると決まったように「おいしいですよ」とかえってくる。「本当に?」と疑いたくなるような日もあれば、おいしいという言葉を聞かなくても、おかわりをする子、無言でそればかりを食べる子と様々です。食事を一緒に取りながら、今日あった話を子どもたちに聞いたり、時には子ども同士で言い合いになりそうなこともありながら、和気あいあいと食事を囲めることが毎回の輪休で私の楽しみの一つになっています。
日記へのコメントも、日中の生活の様子を振り返りながら書いてきた日記に前回の輪休から成長しているところや今回の輪休で感じたことを返すようにしています。毎日一緒に生活していたら、気づ
かない少しの成長を感じられるのは、輪休寮ならではのことだと思っています。
同じように、就寝前には皆で1日を振り返り、できるだけ良かったことを伝えて眠りに入ってもらいたいと思って話をしています。時には注意だけになることもありますが、翌日注意されたことに気を付けて生活している様子もあり、少しでも子どもたちの自信や力になっていったら、と思って接しています。
各寮の生徒を夫婦で預かれることはまだ寮を持っていない私にとっては、子どもと触れ合える貴重な時間です。輪休に来ると、どうしても気が緩みがちになる子どもたちですが、近所のおばちゃんのような気持ちで小言も言いつつ、少しリフレッシュしてまた次からの寮生活を頑張れるよう後押ししていく存在になりたいと思っています。毎回、無事に寮生を送り届けるまで気は抜けませんが、楽しみを持ちながらこれからも子どもたちと過ごしていきたいと思っています。
心理士 姜京任
家庭学校での心理教育は、2014年から本格的に始めました。理由としては、児童自立施設に入所している子どもが起こした問題行動から家庭で学ぶべきものが欠如されていることが多く、特に身体的な成長と共に性に関してあまりにも正常な知識ではない、刺激的なことを集中的に覚えている子どもが増えていることから色々検討するようになりました。
現在、実施している心理教育は、個別心理面接として性的問題行動を起こして入所している子どもを対象にして実施しています。それは、少年院で性教育プログラムをなさっている心理士さんを招き、月一回、一名を選び、面接をしていただいています。面接の場では私も陪席の形で参加しています。別に私の方から毎週プレイセラピーを含め、子どもの能力に合わせて3名を対象にして行っています。最初は、拒否の態度をとっていた子どもも面接を重ねるうちに自分の間違い行動を素直に言えるようになりました。心理面接をうけたからといってすぐ改善ができたとは言えないですが、必要なケアであり、治療であることを再認識しているところです。
また、個別的には、気持ちのコントロールができずに自分の思い通りにならないと暴れてしまう傾向が強い子どもを対象として、面接を通して気持ちの整理ができるように支援をしています。本人がどのような時に暴れてしまうのか、その時にどのようにしたらクールダウンできるか、また、落ち着くための方法等を一緒に考える時間を持ちます。本人に気づかせることが優先であり、すぐ直るものではなく、スモールステップで周りの大人の協力を求めることが必要であることを考えさせています。
次に、全校教育は紋別保健所と網走刑務所から講師を招いて、思春期の体の変化と気持ちの揺れのプロセスを具体的に教えてもらう場を作っています。性的な加害児童が増えているのは根本的に被害を受けた経験のある子どもが加害者になるケースが多く、再発してしまう傾向が強いことから、結果的に法的な措置が与えられる犯罪であることを認識させるためであります。
特に今年は、全校教育ではありますが、中卒と中3のグループと中2と中1のグループに分けて小グループで実施する予定です。それは、話を聞いて終わるものではなく、少しフランクな感じで子どもから質問ができる場を作ってみようと思っています。
最後に、心理教育の一環として、退所してから子どもの生活に密接しているインターネットの世界、すなわち、スマホ・携帯をよりよく使う方法を学ぶ機会を設けています。一般の通信社のスマホ・携帯安全教室の講師を招いて実施していますので、より分かりやすい教育になっています。これは去年までは全校教育として実施しましたが、今年からは退所が決まった子どもを中心に行うつもりであります。
心理教育は、子どもたちの生活に密接して成長に繋がる教育であると考えられます。これからも施設全体の協力を得て、共有しながら検討して行きたいと思います。
望の岡分校教諭 丸尾恵
四月に中一教室を移動し、小学生のとなりで学習していましたが、このたび新しい教室が完成し、八月三十一日からさっそく使わせていただいています。それまで使っていた中一の教室は、校舎の中でも一番古い部分で、歩くと床がミシミシと鳴り、窓も手作り感いっぱいで趣があり、私個人としては大好きな教室でした。しかし、隣の教室との壁が薄く、声や足音、咳払いまで筒抜け。生徒の学習環境としては厳しいものがありました。実際に隣で小学生が「春はあけぼの」の音読をし始めると、私は「頑張っているなあ」と微笑ましく感じていても、生徒の方はそうはいかなく「うるさい!」といらいらし始めるという場面もありました。
新しい教室は生徒玄関からまっすぐで、独立した空間となり、とても静かな環境です。内装も明るい色で、窓には網戸もロールカーテンも付いていてすばらしく快適です。様子を見に来た他の学年の生徒たちには「ずるい!」と言われてしまうくらいです。二人に増えた中一の生徒たちは得意顔で新教室での学習や生活を楽しんでいます。鉢植えの花や、幼虫から飼っていたカブトムシも無事に新教室に引っ越しました。掃除では床の汚れを見つけると何とか落とそうと進んで雑巾がけをする姿も見られます。教室に続く廊下も含め、きれいな教室をいつまでもきれいに使いたい・・・という気持ちが行動に表れていて新しい教室ができて本当に良かったなあと感じています。
もう一つの新しい教室では、分校が開設されてからの先生方の共通する願いだった「教室の増設」がかない、こちらもいろいろな学年・教科で使わせていただいています。
ここの学校に来る生徒の多くは、学習での躓きがあり、学校で学習する習慣すらない生徒もいます。同じ学年だからといってすぐにみんなと同じ学習ができない場合も多いので、生徒の実態に合わせて、個別や少人数のグループで学習する必要があるのです。実際に、生徒に合った学習内容で丁寧に教えてもらうことで「わかった」という喜びや学ぶ楽しさを味わえると、それまで学習に取り組めなかった生徒も意欲的に取り組めるようになったり、ぐんぐん学力を伸ばしたりする様子を何度も見ることができました。
最近は発達障がいを持つ生徒の割合が高くなり、ぐんぐん学力を・・・という例は少なくなっています。それだけに長期間の特別支援教育が必要となり、そのための教室確保は大きな課題でした。今回静かな環境で学習できる教室が増えたことは生徒たちにとってもとてもありがたいことだと思います。
この学習環境を最大限生かせるよう、日々の授業を充実させていかなければ・・・と改めて身の引き締まる思いでいるところです。
掬泉寮生 ユウマ
僕は、ひとむれ会の理事長になって、みんなの中心となりました。僕は、みんなから頼りにしてもらえる様に頑張っていきたいです。それから、僕は初めてひとむれ会の理事長になって、まだまだ分からない事がいっぱいありますが、先生に聞いたりしていきたいと思いました。
今回は、研修旅行の行事でいっぱい仕事の役割でやらないといけないので、大変ですが、自分とみんなの役にたてれば良いなと思っています。これからは、色んな行事があるので、みんなと力を合わして良い行事にしたいです。
自分は理事長なので、だれよりも一生懸命仕事をして頑張っていきたいです。みんなの見本になれるようにもしたいです。最初は、自分が理事長になって良かったのかなと思った日もあったし、理事長をずっとやっていけるのかなって不安になる気持ちもありました。それでも僕は自分のためになるような気がして、思い切って理事長に手を挙げました。今でも不安になる時があります。この気持ちに負けないで、頑張って仕事をやっていけたら良いなと思っています。
自分が理事長になったので、言葉づかいを直していきたいです。これからは、もっと大変になってもくじけないでいきたいです。それと、仕事が増えてもあきらめないで頑張りたいです。理事長になった事で色んな事を学んでいきたいです。
理事長になった理由は、人の役にたちたい気持ちがあったし、自分も変わるかなと思ったので、理事長になりました。今考えれば、理事長になって良かったと思っています。これからは、みんなから頼ってもらえるように一生懸命頑張って見本を見していけたら良いなと思っています。それと、自分がプラスになるように行動と言葉づかいをしていきたいです。
これから、自分は先生達に色んな事を頼まれたら、すぐに行動して一生懸命仕事をやって頑張って一人前の理事長になりたいなと思っています。
楽山寮生 コウダイ
ぼくは、この夏から、教室が別になりました。最初は、「どういう教室なんだろうな」とワクワクしました。そして、教室に入ったら、見た目は白くて気持ちのよさそうな所でした。そして、なれたら、いごこちがよく、休み時間に先輩の人が入ってきて、教室にいるカブト虫をみたりしています。ぼくが休み時間に窓から外をみたら、カワイイ小さいリスがいました。同級生と先生をよんで、「リスいます」といったら同級生も先生もおどろいていました。そして、新しい教室は、先生方にも好評です。
勉強では、新しい環境で学ぶことができてうれしいです。こうして新しい教室で勉強をすること、つくってくれたこと、人に感謝の気持ちが一杯です。そのため自分もあきらめないで授業に取りくむと決めて、勉強をします。新しい教室で勉強させてくれるということがありがたいです。担任の先生も「あたらしい教室で心をいれかえて生活しましょう」と言って、他の担当の先生は「新しい教室ですからますますはりきっちゃいますね」と言ってくれたりしています。
ぼくは、新しい教室をこわさないように使いたいです。以前、残留寮で使った1年もまだたっていない新築の石上館のかべに大きな穴をあけてしまったので、大切に使いたいです。けっして、かべ、他のものにやつあたりしないということと大切にすることを守って授業を受け生活していきたいとおもいます。こわしたら、つくってくれた人、使っている人にも学校にも迷惑になるのでこわさないようにします。
ぼくは、入所してわずか二ヶ月余りで新しい教室で勉強をしています。新しい教室で勉強をさせてもらっています。本当に新しい教室で勉強できてうれしいです。これからも必死に勉強をしていきます。
楽山寮生 フウヤ
ぼくは、秋季のマラソン大会を、はじめて走りました。秋季のマラソン練習から、本番は走れないとか言っていたけど、じっさいに走ってみて、全力で2周走れました。自分で走ってみて、練習よりつらく感じました。練習のときは、だらだら走ってて、歩いたりしていました。でもそのときは体がいたくて、あまり走れなかったです。でも、本番までに直すことができました。なので、あまり、いたくなかったです。歩かず、最後まで走りきりました。自分ではさいしょから最後まで、ちゃんとやれば良かったと思っています。
今回のマラソンでは、自分なりには良いタイムがでました。春季と比べて2分ちぢまりました。すごくうれしかったです。頑張れば出来るんだと思いました。なので、次はそれ以上のタイムを出したいです。ぼくは、マラソンですごく歩きたいというきもちがあったのを、頑張ってのりこえました。先生が、マラソンはこんじょうだと言ってくれたのを、思いだして走りました。ぼくは、最後まであきらめないで、頑張りました。そしたら、タイムがちぢまったので、すごくうれしかったです。まわりの先生にも、頑張ったねって言われて、うれしかったです。
ぼくは、春季のマラソン大会3位とかには入れなかったけど、秋季のマラソン大会は、3位に入れました。すごく、うれしかったです。メダルと賞状をもらえたので、良かったです。今年のマラソン大会は、すごく楽しかったです。家庭学校で、いい思い出をつくれたので、良かったです。