ひとむれ
このコーナーでは、家庭学校の月毎の機関誌である『ひとむれ』から一部を抜粋して掲載しています(毎月上旬頃更新予定です)。
職員が、家庭学校を通じて感じたことや伝えたいことを表しています。是非、ご感想をお聞かせください。
※都合により『ひとむれ』本誌と内容が異なる場合がございます。ご了承下さい。
巻頭言
桜を植樹しました
体育館での花見
〈児童の声〉
よろしくお願いします
よろしくお願いします
よろしくお願いします
校長 仁原正幹
北海道家庭学校では現在「小舎夫婦制」の三つの寮に十三名の児童が暮らしています。この「小舎夫婦制」というシステムは、創立当初から「家庭であり学校であること」を目指してきた北海道家庭学校が嚆(こう)矢(し)となっています。かつては全国の教護院の大多数が「小舎夫婦制」を採用していました。
ところが、適時に適材が得られないことなどから、時代の変遷とともに交替制への転換が進み、現在「小舎夫婦制」を維持している児童自立支援施設は全国的に見て三割程しかありません。北海道内は辛うじて三施設が全て「小舎夫婦制」であり、国立の二施設のほか、関西の多くの施設がこの制度を維持しています。
児童自立支援施設にやって来る子ども達の中には、家庭環境に恵まれず、特定の大人(一般的には両親)との間で愛着関係が十分に形成されなされなかった児童が多く含まれています。幼少期の愛着形成不全が思春期になってからのいろいろな問題行動につながっているケースが多いように思われます。人の気持ちがわからない、推し量って感じ取ることができない、いわゆるコミュニケーション能力に劣る子ども達が大勢います。愛着障害や発達障害による精神的な問題が原因として考えられています。
そういった児童にとっては、疑似家庭のような「小舎夫婦制」の寮の中で、特定の大人(寮長・寮母)との間で愛着関係が形成され、濃(こま)やかに育ち直りを支えられることが、心身の成長に大変有益であり、「小舎夫婦制」には大変大きなメリットがあります。
ただし、デメリットもあります。寮の運営がある程度夫婦職員のみに任される形になるので、寮がブラックボックス化して周囲から見え難くなり、寮運営が恣意的なものに陥って、時に寮生への不適切な対応が惹起される懸念もあります。
でも、そうしたことは十分に克服できるはずです。「小舎夫婦制」の施設だからといって寮担当のみで仕事をしているわけではありません。本館職員もいれば分校教員もいます。施設長など管理職が朝礼や日課や寮日誌やケースカンファレンス等々を通じてリアルタイムに子どもの様子を把握し、組織として的確に業務を遂行してさえいれば、「小舎夫婦制」は何ものにも替えがたい最良のシステムであると、私は確信しています。
あとは担い手です。実は当校でも現時点で寮担当の夫婦は二組しかおらず、一寮は独身の寮長と通いの寮母で運営する形で何とか凌いでいるところです。志と決意を持った夫婦職員を求めています。
副校長 清澤満
五月十二日(土)、桜の植樹を行いました。五月を迎えても肌寒い日が続いていた遠軽町留岡でしたが、この日は朝から青空が広がり、気温は二十三度まで上昇。少し汗ばむくらいの陽気でした。
今回の植樹は、ニトリ北海道応援基金からの助成(百四十本)と北海道日本花の会(事務局:中道リース株式会社)からの寄贈(百本)を受けて実現したもので、国沢林に百五十二本、蘇峰林に十本、博物館前に六十本、グラウンド沿いに六本の合計二百二十八本の苗木を植樹しました。
森林づくりでも精力的に活動されているどろんこ苦楽部の後藤裕代表の呼びかけにより町内外から沢山のボランティアの方々に駆けつけて頂き、家庭学校の子ども達と職員、望の岡分校の先生など総勢百十三名の人手が揃い、短時間で植樹することができました。今はか細い苗木ですが、これから何度も冬を越し、いつしか「北の里山」で満開の桜を楽しませてくれることを願い、大切に育てていこうと思います。
植樹に参加してくださった皆様、ありがとうございました。
《参加頂いた機関・団体の皆様》
中道リース株式会社、ニトリ北海道応援基金事務局、株式会社渡辺組、遠軽信用金庫、遠軽商工会議所、遠軽商工会議所青年部、えんがる町観光協会、遠軽ロータリークラブ、オホーツク総合振興局西部森林室、遠軽町役場、留岡自治会、家庭学校旧職員、どろんこ苦楽部
掬泉寮寮長 藤原浩
今年度初めて花見の会の担当となりました。雪深かった遠軽にも、四月の下旬からようやく春が訪れはじめ、わくわくした気持ちでいっぱいでした。
五月に入り遠軽町内では満開を迎えた桜でしたが、家庭学校は森というよりも山の中にあると言っても良いくらい町内より気温が低く、五月八日に行われる花見の会に合わせるように、家庭学校本館前の桜は丁度見ごろを迎えるはずでした。「外での花見の会が楽しみです」と生徒が言い、私もその時を楽しみにし、会場はどこにしようか、例年通りに本館前かな、グランドも悪くないな、と想像を膨らませていました。
しかし、ゴールデンウィークの最中に雨が降り、気温が十度を下回る日々が続いてしまいました。子どもたちの体調を考慮し、行事は体育館で行うことになりました。願い通りには行かず、残念でした。
以前体育館で行った花見の会は四年前で、自分が北海道家庭学校に着任した年でした。当時の行事名が「さくらまつり」で、五月二十日の開催でした。外の桜は散って葉桜も終わった時期であり、桜もないため、舞台に紙製の花びらを装飾して花見気分を味わうという、少々味気ないものでした。
その時の写真を掘り起こして記憶を蘇らせ、前日の夕方に本館職員の先生方に手伝ってもらいながら会場を紅白幕と紙製の花びらで装飾しました。また当日には青マットを敷いて、音響設備を設置しました。四年前と同じでした。これで大丈夫なはずでしたが、何か物足りない気がしました。「桜を採ってきます」と窪田先生の一言でひらめきました。そうだ、花がありません。せっかく桜が満開なのに…。ということで山に入って、加茂先生、窪田先生の協力で桜の枝木を採って、舞台横と各寮の前を装飾しました。これで完璧!
わくわくした気持ちで開始時間を迎え、オープニングで司会進行を務めるひとむれ会理事の二名の生徒のコントに大うけしました。出し物は石上館のイントロクイズ、掬泉寮のシルエットクイズ、楽山寮の「君の名で」ビンゴゲーム、それと望の岡分校と家庭学校の教職員共同の大喜利とダンス、どれも面白く、どれも素晴らしかったです。そして、おいしい海苔巻きとおでんと花見団子で満腹になり、大満足の会でした。素晴らしい花見になりました。ただ、笑い過ぎて頬が痛くなりました。
外で花見ができなかったのは残念でしたが、子どもたちの日記には「楽しかった」、「印象に残りました」、「いい思い出になります」等々が書れていて、体育館での花見も良かったと安堵しました。桜の枝木も各寮や本館前に飾って、まだまだ私たちの目を楽しませてくれています。
十二日には、ニトリ、中道リースはじめ町内外の多くの皆さんのご支援とご協力をいただいて、給食棟横の国沢林と博物館前の二カ所に桜の植樹を行いました。何年か後には給食棟前で花見行事ができることを夢見ています。楽しみです。
楽山寮 中二 S・掬泉寮 中三 S
「桜の植樹をして」
僕は、初めて桜の植樹をしました。最初は「植えるの難しいのかなー」とか思っていたけれど、ただ穴を掘って桜の根元をうめるという作業でした。よくわからなかったのが桜を太陽の方に向けるということです。それが未だにわかりません。僕はただ穴を掘ってうめていました。 人数が多かったので、博物館前にも他の人達が植えていたのですが、すぐ終わっていました。「こんなに少ない時間で出来るのか」と少し驚きました。そして、僕のやっていた給食棟横の植樹は二本やった時に終わりました。
二百本位もあったのに、こんなに早く終わるってどれだけ多くの人達が来ていたんだと思いました。確か人数は百人ぐらいだったと思います。どうしたらあんなに人が来るのかなと不思議に思いました。早く終わったのはたくさんの人達のおかげです。何かめったにこんなに人数が多いのを見ないから、何人いるのか本当に百人位なのか数えてみたくなりました。
初めて桜の植樹が出来たので良かったです。いつかは大きな桜の木になって満開になると思うと、早く大きくならないかなと思います。何十年後かちょうど満開の時期になったら見に来たいです。本当にいい経験になりました。
「花見の会をふり返って」
今年の花見の会は天候が悪かったので、体育館内で行いました。ですが先生方が桜の枝木を持ってきてくれたりしたおかげで、すっかり春らしい色になりました。そして会場の他に昨年の花見の会と違うところが二つありました。
一つ目は、今年の花見の会では司会を任せてもらったところです。去年は司会などには縁がありませんでした。けれど今年はひとむれ会理事として、石上館の生徒と二人で司会進行をさせてもらいました。こういった仕事では失敗してしまうことが多いのですが、今回はミス等は少なく、分校の先生などの多くの方々からたくさんほめてもらえました。とても嬉しかったです。
二つ目は、今年の花見の会ではいっぱい楽しめたところです。自分は去年お楽しみ会などにほとんど目を向けてなかったので、あまり楽しいとは思えませんでした。ですが今回は自分の寮の出し物を決める話し合いや準備にも参加して、他の寮などの出し物にも目を向けました。そのおかげかとても楽しい時間になりました。
今回の花見の会で、自分は、もっとこういう行事を通して、学校の自然とふれ合ったり、何かを学んだりしたいと思うことができました。
望の岡分校教諭 臼井貴主
今年度、北見市立東陵中学校より異動してまいりました、臼井貴主と申します。見るもの、聞くもの、触れるものすべてが新鮮で、戸惑いながら楽しみながら早くなれるようにと日々を過ごしているところです。
支援教育に携わっていたこともあり、作業学習に関わっていたことはあるのですが、ここで行われる作業班学習とは、規模も専門性も大きく異なっていて、やはり、戸惑いながら楽しみながら勉強している毎日です。
そもそも「ソサイハン」という言葉を聞いた時に、全く漢字が思い浮かばず意味もわからず、某検索サイトに教えを乞うた次第でして。そんな素人ですが、蔬菜班の一員として、子どもたちと一緒に(というか、むしろ子どもたちの足を引っ張らないように)、汗を流しているところです。
大自然に囲まれた環境で…、というのはある意味「枕詞」のように使われるフレーズではありますが、この学校ほどこのフレーズがぴたりとはまるところもないだろうと感じています。この自然環境に子どもたちと一緒にもまれて、子どもたちの成長を見届けるとともに、その手助けができればいいなあと、今率直に思っております。これから、どうぞよろしくお願いいたします。
望の岡分校教諭 高山修一
この春、紋別市立紋別中学校より移動になりました高山です。出身は九州の宮崎県ですが、初めて北海道の地を踏んで早二十七年になります。人生の半分以上を北海道で過ごし、今ではたまの帰省の折にも南国の気候に身体がついていけなくなりました。現在は滝上町滝下地区の自宅から、片道約一時間をかけて通勤しております。新緑の美しいこの季節は毎朝がリラックスできる素敵な時間になっています。また、これから四季折々の風景を楽しめると思うととてもぜいたくな気分です。
さて、これまでの教員生活を振り返ると二十四年間の全てを紋別ブロックの中学校で過ごし、元気のよすぎる子どもたちと向き合って来ました。その中で少しずつ実感として学んだ事は、学級活動をはじめ生徒会活動、学校の文化の創造には子どもたち一人一人の自立に向けた葛藤と成長、それに対する大人からの適切な評価、失敗する権利と、やり直す権利を保証してあげることが大事だということです。
新しい環境で初めてのことに囲まれて、どんなことができるか分かりませんが、急がず、焦らず、しなやかに、目の前の一つ一つに誠実にとりくんでいきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
望の岡分校教諭 吉村綾乃
はじめまして。四月から分校に赴任いたしました、吉村綾乃と申します。この三月に大学を卒業し、今年度が教員一年目です。家庭学校で暮らす少人数の子どもへの指導という今まで考えすらしなかった環境に悩みながらも、周りの先生に助けていただきながら日々頑張っています。
出身は奈良県で、気候の違いに驚きの連続です。四月に降る雪、五月の暖房、連休明けに咲く桜…。けれど自然に囲まれた分校ののどかな雰囲気が地元と似ていて、どこか親しみも覚えています。
分校での生活も初体験の毎日です。作業班学習では酪農班に所属していますが、牛を間近で見るのも初めてでした。鎌などの道具も使ったことがなく、器用に使いこなしアドバイスまでくれる子どもたちに感心させられています。授業中とは違う子どもの姿が見られて楽しい時間です。
まだまだ経験もなく戸惑うことも多いですが、子どもを支え、ともに成長していけるよう精進してまいりますので、よろしくお願いいたします。