ひとむれ
このコーナーでは、家庭学校の月毎の機関誌である『ひとむれ』から一部を抜粋して掲載しています(毎月上旬頃更新予定です)。
職員が、家庭学校を通じて感じたことや伝えたいことを表しています。是非、ご感想をお聞かせください。
※都合により『ひとむれ』本誌と内容が異なる場合がございます。ご了承下さい。
巻頭言
校長杯開催にあたり
花見の会について
平成27年度クラブ活動の取り組み
校長 仁原正幹
百年の歴史を持つ北海道家庭学校ですが、豊かで厳しい自然環境の下で子どもと大人が苦楽を共にする生活とその精神は、ほとんど変わっていないと思います。
六年前から正規の学校教育が導入され、学習指導の面で格段に強化された今もなお、家庭学校では作業指導に重きを置いた支援活動が続けられています。子ども達と施設職員と分校教員が、それぞれ「蔬菜班」、「園芸班」、「山林班」、「校内管理班」、「酪農班」の五つの班に所属しながら、三位一体の形で作業班学習を展開しており、大きな成果を上げています。このことは「流汗悟道」と「withの精神」を基本とする「生教一致(生活と教育の一体化)」の体現であり、児童自立支援の一つの典型がここにあると、私は考えています。
各種行事や寮での朝夕の作業なども長年の歴史と伝統の下に脈々と受け継がれてきています。新装成った寮でもお風呂は薪で沸かしていますので、子ども達が毎日薪割りや風呂焚きをしますが、そんなことを覚えても今の世の中であまり役に立つとも思えません。また、伝統の行事もたくさんありますが、例えば相撲大会などは今の時代の子ども達に合うのだろうかとの疑念を抱くこともありました。
薪割りはマサカリやナタを使いますし、風呂焚きは当然火も扱います。相撲も一つ間違えれば反則技で相手に大怪我をさせるかもしれません。どちらも相当な危険性を孕んでいます。
ところが、子ども達は薪割りや風呂焚きを結構楽しんでいます。経験を積むとともに上手に集中してやれるようになり、大きな怪我もありません。他の人の役に立っていることで達成感も感じているようです。
二年ぶりに実施した相撲大会も、最初のうちは気が乗らない様子の子どもが多かったのですが、番を重ねるうちに徐々に盛り上がっていき、心配していた反則行為も出ず、とても清々しい大会になりました。普段気づかなかった様子も垣間見ることができ、有意義な行事だと実感しました。
毎月行われる行事としては、誕生会や朗読会、校祖の月命日の平和山登山がありますし、季節ごとに行われる行事としては、春の花見の会や秋の園遊会、冬のクリスマス晩餐会などもあります。他にも運動会、マラソン大会、研修旅行、作業班学習発表会など年がら年中行事がありますが、子ども達はそれらの行事を一つ一つ経験しながら着実に成長していきます。
やはり長年続いてきた行事や作業や慣習にはそれなりの意味があるのだと、家庭学校での一年のサイクルを経験して、歴史と伝統の重みを再認識しているところです。変革については次号に記します。
児童自立支援専門員 水原 学
気がつけば雪解け水がいつの間にか小川となり、あっという間に春の訪れを告げる様に辺りから福寿草が咲き始めています。今年も北海道家庭学校の最初の行事である校長杯の時期がやってきました。今回、私が校長杯を担当することとなり、開催にあたっていくつかの課題を感じていました。その一つが競技の選考です。
例年、校長杯は寮対抗で行われるため、各寮ごとで開催までに練習を行ない、競技に参加することでお互いのチームワークを競い合って大いに盛り上がりを見せる行事です。校長杯の寮対抗という対戦形式は、年度始めの寮生の入れ替わりの時期に、寮の団結を深めるという重要な役割も持っていると思っていたため、寮対抗を活かした大会にしたいと案を練っていました。
ここで一つ目の課題となったのが身体接触のある競技を行うかということです。前年度での体育の授業の中で、身体接触がもとでトラブルになるケースが多くあり、今年度のレクリエーションでは身体接触が少ない競技を中心に当面は組み立てていくことが会議の中でもなされていたためです。
また選択肢を狭める二つ目の課題が参加人数です。今年は例年に比べ3月での退所生が多く、在所生が非常に少ない状況での開催になったためです。
身体接触が少なく、競技参加人数が少ないこの二つを満たす競技が見つからず競技の選考が難航しました。当初はグラウンド開きも兼ねて行なうためグラウンド使用の競技として身体接触の少ないソフトボール、キックベースも候補に上がりましたが、寮対抗で行なうには審判、選手共に人数が足りず断念せざるを得ませんでした。次に体育館使用の競技として卓球、バトミントン、ミニバレー、プレルボール等身体接触が少ない競技が上がりましたが、具体的に寮対抗として行なえる競技として競技の認知度も含めて検討した結果、ミニバレーを選ぶこととなりました。
1日目の日程はミニバレーとして具体的に組み始める一方で、同じ競技を2日間続けて行なうのは、生徒が楽しめるかという点において難しいと考えていたため、2日目は違う競技を選択し、例年とは違いオセロ大会を開催する方向で検討を進めました。
例年と比べ、グラウンド使用での開催から大きく舵を切り、2日間とも屋内での開催となった為、食事だけでも屋外に出て皆ですることができないかと周りの先生方からの助言もあり、ミニバレー大会後にジンギスカンを体育館横の駐車場で食べる形をとって、やってきたばかりの春を皆で楽しむこととなりました。
このように色々と頭を悩ませていざ校長杯に臨んだものの、案ずるよりは産むが易しという言葉のとおり、生徒達はそんな思いは露とも知らず、思い思いの楽しみ方をしてくれていました。初日のミニバレー大会では6チーム中3チームが4勝1敗と勝ち星が並び得失点差で順位が決まるという熱戦となりました。生徒達の当日の日記を見ていても最初は拙いチームワークだったが、試合を重ねるにつれチームの勝ちへのこだわりが生まれ、いつの間にか周りに前向きな声かけが自分からできていたとよい振り返りをしていました。
2日目のオセロ大会では例年とは趣向が違い、リーグ戦、トーナメントを経て勝者を決める個人戦を主とした大会となりました。当日に急遽、高校生寮の不参加が決まり参加人数が減るというアクシデントがありましたが、前日スポーツで活躍した生徒とはまた違う生徒が上位に名乗りを上げる等各生徒の違った側面を捉えることができた様に思っています。
今回、例年とは違う形での校長杯開催となりましたが、各先生方のご協力を頂くことで無事開催することができました。この場を借りて御礼申し上げます。
児童生活指導員 竹中 大幸
私が家庭学校に来て三年目の春を迎えました。花見の会を担当して二回目ですが今年も桜の花がちょうど良く咲いてくれるように願っていたのは言うまでもありません。昨年は行事前に咲いて強風の影響もあってか散った後に行いました。当日の天候で屋内か屋外の判断をしなければいけなく、晴れてはいたのですが強風のため体育館での開催でした。当時は中卒生がたくさんいたので彼らと一緒に忙しく作業をしたことを覚えています。
今年は昨年のことを踏まえて一週間ほど早めに行うこととなっていましたが自然の流れには勝てず、連休あたりに見ごろになっていました。行事まで持ってくれれば良いなと思いましたが見事に葉桜になってしまいました。行事前日の天気予報ではあまりよくはない予報でしたが、当日になると少し晴れ間も見られるちょうど良い天気となりました。しばらくぶりの屋外での開催で、私が担当になってから初めて屋外での準備作業でした。
どのくらいの準備時間が必要なのか見当も付きませんでしたので、以前屋外で行われた記録写真を見て、資料を基に下準備をしました。今年は中卒生が不在だったので各寮、分校、家庭学校職員の共同作業で行いました。使用する物が限られていたのでトラブルもなく準備できました。
いよいよ花見の会の開催となり美味しい食事をとりながら各寮の出し物を見ていました。各寮興味深い出し物があるなか私が印象に残ったのは高校生寮の向陽寮のアクロバティックな動きでした。行事直前まで何をするのか決まってないことを知っていたので驚きました。得意な生徒の動きのキレが良いのはもちろんのことでしたが、不得意な生徒は技が途中で崩れてしまってもやり直して最後までやり通す、そんな姿勢を見られたことを嬉しく思いました。最近の高校生の生活態度があまり良くなかったので心配をしていましたが高校定時制の職員が見守るなか彼らの集中している一生懸命な姿は好印象を与えたと思います。
他寮でも同じことで普段人前に出ないような児童が発表する、自分で考えた出し物を個性的に披露する姿が周りを楽しませてくれました。分校職員の個人に関するクイズも意外な一面が見られたので良かったと思います。
桜が散ってしまったなか花見と言うには淋しい気はしましたが子ども、職員、来賓をふくめてとても雰囲気の良い花見の会だったと感じます。
来年こそは桜満開のなか子どもの元気な姿を見られることを期待します。
児童自立支援専門員 高橋 徹
春の訪れと共に、家庭学校の野外・屋内行事も活発になって参ります。5月初めに校長杯が開催され、有意義な時間を過ごすことが出来ました。それと同時にグラウンド開きとなり、例年通り家庭学校のクラブ活動が開始となりました。今年度も2つのクラブ活動が予定されておりますが、この稿執筆時点では未だどのようなクラブが開催されるか確定しておりません。皆様のお手元に「ひとむれ」誌が届く頃に確定される予定となっております。
さて、本校のクラブ活動でありますが、生徒達はクラブ活動を通して土曜午前中のひとときを使って充実した時間を過ごしております。クラブ活動の目的は、活動の効用として運動と親しみ身体能力を向上させることは言うまでもなく、道具や施設を大切にする精神やチームワークや団体行動のルールを守る思いやりの精神を育み、以て生徒一人ひとりの本館生活・学習及び寮生活の向上に資する事を目的としております。今年も充実した真剣な時間を目指したいと考えております。
今年度活動候補のクラブとしては「合気道クラブ」「陸上クラブ」及び「バドミントンクラブ」のうち、2クラブの活動が予定されております。そのうち合気道部は家庭学校の歴史と深い関わりがある伝統のクラブ活動として継承して行きたく思っておりますので、感謝の念を込めて今年度も現時点ですでに活動が予定されております。
合気道は世界規模の大きな活動をしており、精神の鍛錬に非常に有効な武道ですが、遠軽にほど近い白滝が縁の地の一つであり、合気道の祖である植芝盛平先生と家庭学校の祖である留岡幸助先生とは交流があったそうです。その交流の縁から当時の家庭学校校長であった谷先生の時に合気道部が出来たと言うことでした。合気道部開設の際には埼玉大学のOBの方や学生からの御厚志・寄付を頂いて設備等も整ったようです。現在の体育館に備わっている暖房設備等もその一つであるとのことです。
現在は三人の先生方で指導して下さっていますが、指導方法は親切丁寧で生徒を良く理解して指導してくださっています。合気道を通じて技の習得に止まることなく、礼儀作法をも身につけて沢山の生徒が家庭学校を卒業して行きました。
陸上クラブ・バドミントンクラブも昨年度活発な活動を行い、人気が高いクラブ活動です。陸上クラブは長・中距離走を中心に活動しています。家庭学校では春・秋とマラソン大会が開催されます。陸上クラブの生徒は上位入賞を目指して活動に取り組んでいます。
バドミントンクラブは柔軟体操等から始まり基礎練習ほかバドミントン実技に取り組み、試合形式でも練習を行っています。今年度は体験入部の後、希望を取ってクラブ活動を決定していく予定です。
今年も留岡の山中に生徒達の元気な歓声や気合いが谺します。