ひとむれ
このコーナーでは、家庭学校の月毎の機関誌である『ひとむれ』から一部を抜粋して掲載しています(毎月上旬頃更新予定です)。
職員が、家庭学校を通じて感じたことや伝えたいことを表しています。是非、ご感想をお聞かせください。
※都合により『ひとむれ』本誌と内容が異なる場合がございます。ご了承下さい。
巻頭言
本校の職員となりました
着任に寄せて
<児童の声>
校長 清澤満
校長を命ぜられ一か月が経ちました。家庭学校に関わってくださる機関・団体の皆様、いつも子ども達を応援してくださる支援者の皆様、どうぞよろしくお願いいたします。
道職員を退き札幌で働いていた私が、もう一度児童福祉の仕事をしたいと思い立ち、家庭学校にお世話になったのは二年前の四月でした。一職員として子ども達のために働きたいと考えていた私に、果たして百余年にわたる歴史と伝統を持つ家庭学校の校長が務まるのかと不安な気持ちもありますが、毎日の作業や勉強を頑張っている子ども達の姿を見ていると、大上段に構える必要は何もなく、初志貫徹でよいのだと改めて気付かされます。私自身は腰を据えて子ども達のための仕事をしようと決心しています。それができて初めて家庭学校の歴史と伝統を守るということにも繋がるのだと思うからです。
校長初日の四月一日。定例の職員会議で私の考えを三点、職員に伝えました。どれも特別なことではありませんが、私が普段から心掛けていることでもあり、その想いを聞いてもらいました。会議では伝えきれなかったことを補足し、整理すると次のような内容です。
一点目は、ここに来る子ども達とどう向き合うかということについてです。
施設入所に当たっては、児童本人の自己決定が大切で、その気持ちがブレるとそこでの生活が難しくなると言われます。そのため、児童相談所は児童本人に対して施設とはどんな所なのかを丁寧に説明しながら入所の必要を説き、児童本人が施設での生活を納得した上で自己決定できるよう動機付けしてくれています。しかし、自己決定したのは小学校の中学年位から中学生までの義務教育年齢の子どもです。発達の課題などがあって生きづらさを抱えている子どもが多いのも事実です。その子らがここでの生活になかなか馴染めなかったり、不調になって生活が乱れた時に、振り返りは必要であっても「ここに来ると自分で決めて来たんだろう」と突き付け、責める材料とするのは酷です。
子どもが家族の元を離れて暮らすことにどれだけの不安と葛藤を抱えているのかを想像してみましょう。入所前の生活を見直して頑張ろうと自己決定してきたとしても、それはすごく脆いものなのです。気持ちのブレは児童相談所の動機付けが不十分であった訳でも、子どものせいでもないことが分かってきます。ブレないように導くのが私達施設職員の仕事の仕方だと私は思っています。そのためにも、子どもが育ってきた環境や生活指導等を要することとなった背景・要因をよく理解しておくことが必要です。
子どもは新しい環境に警戒しています。警戒を解くには「ここは安心して生活できる場所だ」と感じてもらえるように、決してきれい事ではなく、良いことも悪いこともその子の全てをまずは受け入れ、心を通わせながら関係を作っていくことが大切です。「ここは大丈夫そうだ」と感じてくれればチャンスです。子どもの変化や成長を願う気持ちは勿論大切ですが、それを急ぐあまりに指導が先行し過ぎては、大人の言葉に耳を傾けようとせず、口を固く閉ざしてしまいます。
二つ目は、私達職員集団のことです。私は職員の協調により施設としての総合力を高めていきたいと考えています。
子どもの成長を支えるのは簡単なことではありません。個人の力量だけに頼るのではなく、私達の仕事にはチームとしての力が必要です。でも、中にはチームで仕事することが苦手な人もいます。自分と違うやり方や考え方の人も周りにはいると思います。私も含めて、人はそういう人を否定的に捉えがちです。だからと言って、その人を排除したり批判したりしても、そこから得られるものは何もありません。いくら正論を並べて相手を論破してみたところで何の解決にもなりません。
私達大人の言動を子ども達はよく見ています。その良き手本となるべき大人として、共に児童福祉の向上を目指す仲間として、考え方の違いを認め合い協調することが何より大切です。相手の考えに思いを巡らせながら自分の考えを提案してみたり、相手の考えを引き出したりしながら対応策等を模索する方が施設としての総合力が確実に高まっていくと思います。
三点目は、関係機関との連携についてです。分校をはじめとする関係機関との連携を大切にしてほしいと思います。
二〇〇九年(平成二十一年)に施設内に望の岡分校が設置されて十二年目を迎えます。
家庭学校には、長い歴史の中で築かれてきた生活日課や作業、学習など確固たるスタイルがありました。学校教育導入の際、遠軽町教育委員会はそれをほぼ受け入れてくださったと聞いており、教育サイドの福祉への歩み寄りが大きかったものと思います。
福祉と教育の文化の違いが連携を難しくしていると言われることがありますが、相手の立場や役割の違いを理解するとともに、生活と教育の場が近接していることのメリットを活かしながら更に連携を深めていきたいと考えています。
連携すべき関係機関・団体は他にも数多くありますが、中でも児童相談所との連携は欠かせません。情報交換、相談・調整などのアクションが少なくなると、徐々に関係が希薄になってしまいます。顔の見える連携のためには、私達施設側からの能動的な働きかけが必要だと考えています。連携不足の一番の被害者は子ども達なのです。
新型コロナウイルスの感染拡大が続いています。子ども達への影響を最小限に抑えるために分校とタッグを組んで支援に当たります。当面、本校の見学などはお断りせざるを得ない状況です。皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。
事務局長 安江陽一郎
令和二年四月一日付けで本校の職員となりました。よろしくお願いします。
ここで、簡単な自己紹介と一ヶ月間の私なりの近況をお知らせします。
私の職歴は、大きく分けると四つとなります。
一つ目は、地元の高校を卒業後、遠軽地区消防組合で消防士をしていました。四月上旬には江別市野幌にある北海道消防学校の初任科に入校し、終了後は地元に戻り消防車や救急車に乗っていました。七年間勤めました。
二つ目は、その後、ご縁があり遠軽町役場で事務吏員をし、平成三十一年三月三十一日、遠軽町議会事務局長を最後に定年退職しました。
三つ目は、定年退職後、引き続き遠軽町役場の再任用職員(滞納対策室勤務)として一年間お世話になりました。
四つ目は、本年四月一日から本校でお世話になっており一ヶ月が経ちます。
さて、本来は本校の職員となってと題してその意気込みを書きたいところですが、私なりの近況をエピソードを交えて書きます。
皆さんも心配されていると思いますが、本校においても新型コロナへの対応が課題となっています。
私の携帯電話が鳴ります。「安江さん、家庭学校に行っているんだってね。家庭学校でも消毒液困っていないかい。家にあるから寄贈します」携帯電話の掛け主は、地元業者の社長さんで前職場での知人でした。本来、心の熱い人ですが、感謝、感謝です。
数日後、事務局へ一本の電話が鳴ります。対応したのは、企画総務部の職員です。電話の内容は、家庭学校でも新型コロナで大変ですよね。子供達や寮長・寮母の先生方、職員の方へゼリーを送ります。頑張ってください。電話の掛け主は、道内の某お菓子メーカーさんで、僅か一分足らずの内容です。電話が終わると、職員は「感動した。涙が出る」と胸を詰まらせちり紙に手が届きます。側にいた私も、言葉が出ません。
そして後日、私も還暦を過ぎているにもかかわらず、この原稿を書きながら何故か目が潤むのです・・・。
他にも道内・全国からも善意が届けられています。そして、本校だけでなく、道内・全国において、新型コロナの影響があると思われる児童施設へ送られていると拝察しています。大変ありがたいことです。
と同時に、児童の安全・安心を第一として、それぞれの未来を願いつつ、児童の親となって臨機応変に対応している寮長・寮母や指導員の先生方、分校の先生方には、本当に頭が下がります。
仁原・清澤チーム参上。
望の岡分校教頭 吉村憲彦
紋別市立南丘小学校からまいりました教頭吉村憲彦です。
望の岡分校には平成21年4月から7年間お世話になりました。以前赴任した時には、家庭学校のシステムや子どもたちの様子、分校の役割などほとんどわからないまま手探り状態でスタートしたことを思い出します。一番印象に残っているのは、作業班学習です。「流汗悟道」の精神の下、子どもたちと共に汗びっしょりになりながら作業を行ったことが印象に残っています。またたくさんの思い出を子どもたちや家庭学校職員の皆さんと一緒に作っていきたいと考えています。以前に望の岡分校に来た時は、37歳でした。それから12年が経ち、5月で49歳になります。趣味は、ビリヤードです。望の岡分校の子どもたちの幸せな未来を願って頑張っていきますので、ご協力のほどよろしくお願いいたします。
春の訪れ
新型コロナウイルス感染拡大という、いまだかつて経験したことのない非常事態の中ですが、望の岡分校にはいつもと変わらない春が訪れました。本誌が皆様の元に届く頃、家庭学校の敷地内の桜も見事に咲き誇っていることでしょう。世の中は、新型コロナウイルス感染症のため先行きが不透明で、気持ちが沈みがちではありますが、太陽の光をいっぱい浴びた家庭学校の桜は、気持ちを明るくしてくれるはずです。
今は、早く新型コロナウイルス感染症の終息宣言が出て、例年と変わらない日常を子どもたちと過ごせるようになることを祈っています。
さて、令和2年度の望の岡分校の教育活動がスタートし、1ヶ月が過ぎました。(4月20日(月)から5月6日(水)まで臨時休業となっていますが…。)
この間、家庭学校には、毎朝の検温や手洗いうがいの徹底、マスクの着用などご協力いただいております。分校でも、職員のマスクの着用、授業形態の工夫、教室の消毒、換気などの感染症対策を続けています。
そのような中で、義務教育の児童生徒21名が望の岡分校で学んでいます。例年のことですが、望の岡分校では、家庭学校に入所する子どもたちを随時「区域外就学」として受け入れるため、年度末を迎える頃には児童生徒数が現在の1.5倍近くになります。
今年度、分校では次の通り令和2年度の重点目標を掲げています。
未来に生きるため~心のつながりを大切にする児童生徒の育成~
重点目標の達成に向け、2つの基本方針を設定しました。
アメリカの心理学者によると生存欲求が満たされることで関係欲求が生まれ、成長欲求につながるとされています。家庭学校に来る子どもたちの中には、自分の家庭であっても安心安全に暮らすことのできない子どももいます。また、安心安全に暮らしていたとしても、人とのかかわりがうまくできず適切な人間関係を築けない子どももいます。そのような中で、成長欲求つまり知的好奇心を満たすなど、学びたいという欲求が生まれにくい環境にいます。
家庭学校にいる限り、子どもたちは安心安全に暮らすことができます。次に大切なのは、適切な人間関係の構築です。子どもたちが自分自身の成長を実感するとともに良好な人間関係を築くことが重要であると考えています。
分校では、心のつながりを大切にする児童生徒の育成のため、今年度次の2
点をポイントに教育活動を展開します。
基本方針1 |
達成感や充実感を 積み重ねる教育の推進 |
分校の子どもたちは、これまでの義務教育のレールからはみ出さざるを得なかった子どもたちです。勉強が嫌いで、大人を信用しないのが当たり前の状態でやってきます。心のつながりのない子どもたちに普通に授業をしても、通用しないのが当たり前です。
そこで、そんな子どもたちと心のつながりを持つために、達成感や充実感を積み重ねる教育を推進します。
子どもたちの中には、不登校気味になり、本来であれば適切に積み重ねられている学習内容を全く理解していない子どももいます。また、発達障害があることに気づかず、通常授業を続けたために学習内容を理解せずに成長した子どももいます。
そんな子どもたちに達成感を味わわせるために、児童生徒一人ひとりの個別の指導計画を整備し、その子どもに合った学習内容を少しずつ進めていくスモールステップで学習を進めていきます。さらに、子どもたちができたときに教師が「褒める」「認める」ことで子どもたちに心のつながりを感じさせます。
基本方針2 |
自己肯定感を磨き、自他 を尊重する教育の推進 |
分校に転入してくる子どもたちは、自分自身を否定しがちです。これまで、褒められることや認められることより、怒られることや否定されることの方が多かったのですから仕方ありません。そんな子どもたちが自分を認め、友だちを認めるというのは、とても難しいことです。
そこで分校では、子どもたちにできることを増やし、褒められる場面を多く作り出すことで、自己肯定感を高める教育を推進します。
その中で、子どもたちのことを一番に考え、大切にする我々大人の気持ちが伝われば、子どもたちも大人を信頼し、心のつながりが強くなり、さらに自己肯定感が高まると考えます。自己肯定感が高まるということは、自分の成長や良さに気づくことになります。他者を認められるようになるのはその後です。自分のことで精一杯で心の余裕がないと、周囲のことを考えることはできません。自己肯定感が高まり、自分の心に余裕ができた時、周りの人を気遣うことができるようになります。そのために、授業を通して子どもたちの自己肯定感を磨きたいと考えています。
家庭学校での生活が安定した子は、地元の学校に戻ったり、高校に進学したり、就職したりと、皆それぞれの未来を拓くために巣立っていきます。その時に向け、重点として掲げた目標や方針に少しでも近づき、自分の未来を切り開いていってもらいたいと願い、教職員一丸となって教育活動を推進していきます。
遠軽町教育委員会、家庭学校、その他関係機関の皆様におかれましては、これからも様々な面でお世話になります。今後ともご指導、ご協力のほど、よろしくお願いいたします。
石上館 中三 H
理事長になってぼくはしっかりと公平な目を持ち、偏見、差別をしないようにしたいです。
気持ち的には少し不安もあり、自分への挑戦と思い、自分の生活、性格を改善するのに、力を入れていかなければいけないなと思っています。
ぼくは本当は人の前で話すのが苦手です。これから、運動会、誕生会などで、人前で話すことが多くなってくると思います。そんな中で自分がどう話しをまとめられるか?そういう事も身に付けていくというのがぼくの目標です。
もう一つ大事な目標を立てることにしました。それは「凡事徹底」です。意味は当たり前のことをだれよりも徹底して行うという意味です。簡単に成しとげられると思いますがそうとはいきません。まず自分で、当たり前のこととは何なのか?分かった所でそれをどう行動に移せばいいのかを自分で考えなければいけません。ここにいる人だれもがまだ出来ていないと思います。それを、目標にがんばっていきたいです。
しかし自分一人では、出来ない事もあると思います。だから人との信頼関係を築きあげ、自分もなるべく人を信じ、自分を支えてもらいぼくも人を助けていきたいです。
ぼくはいままで、人に信じてもらわれなくなるくらいいろんな事をしてきました。そんな中でも自分を見捨てなかった家族のようにぼくも人のことを見捨てないようにしたいです。