このコーナーでは、家庭学校の月毎の機関誌である『ひとむれ』から一部を抜粋して掲載しています(毎月上旬頃更新予定です)。
 職員が、家庭学校を通じて感じたことや伝えたいことを表しています。是非、ご感想をお聞かせください。
※都合により『ひとむれ』本誌と内容が異なる場合がございます。ご了承下さい。


2020年02月号

「児童相談所との連携について(二)」

校長 仁原正幹

 「児童相談所との連携について」は、昨年九月一日発行の第九六九号でも書かせていただいたので、今回は第二弾ということになります。念のため前回の内容を反復しますと、概要は次のとおりです。

・ 親子分離が必要な社会的養護のケースに対応する際には、児童相談所と児童福祉施設が車の両輪となって密接な連携・協力の下に業務を遂行することが肝要であるが、両者の連携・協力体制が十分ではないと感じている。

・ そこで、全道の児童相談所に対して、「一時保護期間等における動機付けの徹底」と、「再判定、再動機付け等を目的とする一時保護の迅速な対応」の二点について、改善を要請する。

 この二つの項目については、全道の九カ所の児童相談所全てに当てはまることでしたので、私としては『ひとむれ』記載以外にも、これまでいろいろな機会を通じて提言させていただいてきました。お陰様で各児童相談所の理解も深まり、両者の緊密な連携の下に入所児童への対応が一層円滑に行われるようになってきており、大変有り難く思っています。

 さて、ここからが今回の本題です。私としては、実は札幌市児童相談所に対してだけなのですが、前々から疑問に感じ、懸案事項として意識してきたことが、前述の二項目のほかに二項目あります。そこで、昨年の七月に、前述の二項目と合わせて全部で四項目の改善についての要請文書を札幌市児童相談所にお送りし、爾来半年間にわたって文書や口頭での協議を重ねてきました。その結果前記二項目については、他の道立児童相談所同様に一定の改善が見られましたので、当校としても了解をさせていただきました。

 一方、問題点が解決できず、未だに懸案として残っているのが次の二項目です。一点目は、「当校との連絡調整窓口を管理職に一本化すること」、そして二点目は、「一時保護における個室対応の抜本的な見直し」ということです。この二項目については、札幌市児童相談所の回答内容が全く理解できなかったものですから、当校としては了解できない旨を、先日次のように文書回答しています。

 「当校との連絡調整窓口を管理職に一本化すること」についての概要です。

・ 児童相談所と児童福祉施設が互いに組織として機関決定した内容を連絡調整する際には、本来ケース等の全容を掌握している管理職が組織を代表してその任に当たるべきと考える。

・ 貴所において複数の課が所管するケースを、数多く在籍する係長のうちの一人に、別の課、別の係のケースまでを所管・担当させるという考え方については、組織機構の体をなしておらず、理解できない。(多くの場合窓口担当の係長では用が足らず、当校の部長が個々のケース毎に担当児童福祉司と調整してきたのがこれまでの実態です。)

・ そのような体制では迅速な対応ができないばかりか、組織としての一貫性を欠き、重大な判断ミスを誘発するおそれがあり、大きな懸念を抱いている。

・ 貴所の回答文書及び追加説明文書の中で、取扱ケース数が多く、課長の増員が図られていないため、当該課長の業務量に鑑みて対応できない旨の記載があったが、施設入所ケース数は取扱ケース数全体のごく一部に過ぎず、入所施設との連絡調整等に要する時間など僅かなものに過ぎないはずである。

・ そもそも児童のケースワークの総括は児童処遇の担当課長の本来業務であり、当該課長が通常業務の中で施設入所ケースのような重要ケースの内容を日常的に掌握していれば、新たな負担増など起こり得ないはずである。

・ 貴所の言うように業務量が大幅に増大するとすれば、それは当該課長が日常的に重要ケースの内容を掌握していないために、施設側からの働きかけに即応できず、その都度貴所内部での調整に時間を要することから生じるものではないかと推察するものである。

・ また、当校の求めに応じると、全ての児童福祉施設への統一した対応が必要となるので対応できないという趣旨の記述もあったが、貴所の内部事情や都合を優先し、施設側に一方的に負担を強いる本末転倒な話であると思う。

・ いずれにしても、業務量の問題ではなく業務の質、組織としての業務の進め方の問題であると考えるので、貴所の考え方に同調し、納得・理解することはできない。

次に、「一時保護における個室対応の抜本的な見直し」についての概要です。

・ 貴所措置の入所児童の証言から、当校入所児童の多くが貴所一時保護所の個室に行動の自由を制限されながら長期にわたって拘禁されている実態が判明した。(以下、児童の証言から)

・ 小さな個室には寝具と机のほかには箪笥と洗面台くらいしかなく、勉強道具などの私物や本などの持ち込みが制限された(本などは一切認められない場合もあるとのこと)。

・ 自由に廊下に出ることが許されないので、トイレに行きたいときにはインターフォンで職員を呼んで他児童の居室と離れたトイレに連れて行かれた。

・ 終日机の前に座っていることを求められ、長期にわたる孤独を強いられた。

・ 中には「個室は牢屋のようで地獄のような場所」との感想を述べる児童もおり、また「施設入所を決めないとずっと個室だよ」と貴所職員に迫られたとの証言もあった。

・ こうした証言は多くの児童から得られており、それらの児童が貴所一時保護所の個室対応への忌避の念を強く抱いていることも事実であり、不適切な対応が行われているのではないかと危惧している。

・ そのような不適切な対応により十分な動機付けが行われず、真の意味での自己決定がなされないまま入所の措置が行われているとすれば、当該児童の徳性を害するとともに、入所後の成長にも大きく影響するものと考える。

・ さらには、そのような貴所の一時保護所の個室対応は、児童福祉法の根本精神に反し、児童虐待防止法にも抵触するおそれがあるものであり、児童の人権侵害に当たるのではないかと、大変危惧している。

・ 貴所の回答文書及び追加説明文書の中では、「個室対応」あるいは「個別の配慮」という言葉で表現した記載があるが、監禁・拘束の実態が目立たないように論点をすり替えて表現していると指摘せざるを得ない。

・ 入所時のオリエンテーション等個別の配慮に長時間にわたって拘束する必要は全くない。

・ 集団生活に馴染めず不安定になる児童にも長時間の拘束は必要ない。

・ 他児に危害を加えるおそれや自傷行為が懸念される場合であっても、その対応はクールダウンのための短時間のしかも出入り自由な個室の活用で十分足りることである。

・ 問題行動を有する児童が数多く入所している児童自立支援施設においてさえも、そのような個室は存在しない。

・ 仮に当校がそのような部屋を活用したとすれば、貴所は当校に対して被措置児童虐待と認定し、児童福祉法違反を申し立てるものと思われる。

・ 因みに児童福祉の関係機関の中で、そのような行動の自由を制限・剥奪する「強制措置」が例外的に認められているのは、国立の児童自立支援施設二カ所のみであり、その二施設においてさえも、当該児童が無断外出や粗暴行為を繰り返すおそれが十分に高い場合などに、家庭裁判所が児童一人一人に対する期限を付して認めた場合に限定されている。

・ 仮に貴所が行っている個室対応と同様のことを保護者が行った場合、貴所はその保護者に対して身体的虐待若しくは心理的虐待と認定し、児童虐待防止法違反を申し立てると思う。

・ 児童相談所といえども決して例外ではなく、一時保護所において保護者の代わりに児童の身柄を預かる児童相談所長が児童虐待を行う結果となり、そのような児童の権利侵害は許されるものではないと考える。

 半年に及ぶ協議を重ねても共通認識に立てなかったので、広く世に問うてみたいとの思いから、敢えて『ひとむれ』誌面に記載したものです。皆様のご意見等をお聞かせいただければ幸いです。

2020年02月号

心理部会に参加して

心理士 姜京任

 東北・北海道地区の心理部会が山形県立子ども医療養育センターを会場に十一月二十八日から二十九日の日程で行われました。

 部会初日に、山形県立子ども医療養育センターの診療部長である伊東愛子医師から「発達障がいの理解と支援」についてお話しいただきました。講演では、LD(限局性学習症)、ADHD(注意欠如多動症)、自閉スペクトラム症、不安障害など、発達障がいの基本知識から支援のヒント、薬物療法等について非常に有益な説明があり、自分自身で改めて子どもの発達障がいについて整理してみることができました。また、先生の子どもたちに対する強い思いが伝わってくる講演でした。

 家庭学校にはADHDと自閉スペクトラム症を併せもっている子どもが多くいます。不注意と多動、加えて、社会性の欠如で人と上手くつきあえない子、それに伴い困ったことがあっても大人に解決してもらったことがないのでSOSを出せない子、気持ちの表現が苦手で社会規範に反する行動をしてしまう子、そういう子どもたちが小集団で生活しています。

 十八歳以下の自閉スペクトラム症例が不安障害を併存する率は四〇%と有意に高く、軽度の自閉スペクトラム症であっても不安障害の併存によってその特性が強く現れるという研究結果が出ているという先生のお話に納得している自分がいました。

 入所してからしばらく試し行動が続き、また、自分の置かれた環境に不適応を起こし問題行動を繰り返す子どもがいます。薬物療法を併用しながらもしばらくは不安な状況が続きます。不安を解消するためにはかなり長い時間が必要です。その間、寄り添うのは私達職員の役割ですが、その道のりは容易なものではありません。不安な状況に陥っている子どもたちのケアは一人ではできないことであり、その子に関わる職員が情報を共有しながら支援方法を検討し、施設全体で対応していくことが必要であるということを再認識した講演でもありました。

 講演の最後に、伊東医師は「難しい子」の支援について、①行動の裏付けとなる事実を明らかにする、②目の前の人を素直に受け止める、③チームワークで子どもの様々な姿を知る、④いかにして人と出会える人に育てるか、という村瀬嘉代子先生と青木省三先生の言葉を引用して説明されていました。遠軽に戻る途中、「いかにして人と出会える人に育てるか」という言葉がずっと頭の中を巡りました。まさに自立の終点は「人に出会える人になること」だと、この仕事をしていて思っているからです。

 今回の研修では、山形県立朝日学園の皆様に大変お世話になりました。初日の夜、交流会があり、様々な想いを分かち合える貴重な時間を頂きました。温かくて笑い声が絶えないこの一時が私にとってまさにリフレッシュの時間となりました。本当に心から感謝申し上げます。

2020年02月号

日々勉強

教諭 土井淳禎

 突然ですが、四月発行のひとむれを覚えていらっしゃるでしょうか。仁原校長先生のお話の中で、生徒達は「推敲」の読み方や意味を授業で習ったものの、由来までは知らないようだった…という内容から始まる記事があったかと思います。

 その授業担当が、私でございます。中学一年の国語で故事成語の単元が出てきますし、二・三年でも「書くこと」の指導の中で幾度となく推敲の活動があります。その度に由来などもおさらいしているのですが、なかなか定着には至らず、力不足を実感している次第です。(ちなみに一年生の授業で推敲の由来を聞いてみたところ、校長先生のお話を聞いたことを覚えていた生徒もいました。)

 さて、今回は「中学一年生に関連して何か文章を…」とのことでしたので、徒然なるままに述べていこうと思います。

四月当初、一年生は四名の在籍でしたが、現在八名在籍しております。昨年度の一年生は二月になるまで一名しか在籍していなかったことを思うと、ずいぶん賑やかになったなぁという印象があります。

個性的な生徒が多く、お互いに良くも悪くも影響を受けながら日々成長をしています。時にはぶつかり合うこともありますが、それも相手がいるからこそ起きることです。自立心や周りへの配慮の気持ちが身につく良い機会になればと思い、その都度指導しています。

 中学校は教科担当制ですので、担当していない授業について全てを把握しているわけではありません。ただ、一年生の授業態度や意欲について良い評価をいただくこともあり、嬉しく思っています。様々な事情により、今まで学校に行けていなかった生徒もいますが、知らないことが多いぶん、授業内容を素直に吸収することができているのではないかと考えます。

 国語の授業においては、先日「読点ってどうして[ドクテン]ではなく[トウテン]と読むのですか?」という質問が出ました。お恥ずかしながら不勉強なもので即答できなかったこともあり、後日、公立図書館で『大漢和辞典』を使って調べました。結論から言えば、「読」という字を[トウ]と読むときには「読みやすくする」だとか「声をたてて読む」という意味になるので、[トウテン]という読み方をすることになっているようでした。大学卒業以来使うことのなかった『大漢和辞典』の引き方を覚えていて安堵したとともに、生徒の素朴かつ鋭い質問によってこちらも新たな知識を得られたことに喜びを覚えました。

 このように、意外な場面で新たな発見が生まれながら、授業が進んでいます。生徒たちは、学習内容が自分の経験と紐づけられたり、自分の質問によって学習が深まったりすることによって、知識が定着していきます。時として雑談や私語とも捉えられそうな発言も、なるべく拾い上げていきたいと努力する毎日です。

 そんな一年生も、もうすぐ二年生になります。二年生は身体も心も大きく成長する時期です。どこの中学校でもそうだと思いますが、不安定になりがちな学年でもあります。今の一年生の長所である素直さや明るさを失うことなく、良い先輩になっていってくれることを願っています。今年度も残り少なくなってきましたが、学年部一丸となって、できるかぎりの指導・支援を行ったうえで進級させたいと考えています。

何だかあまり内容の無いような文章になってしまいましたが、これも若輩者の戯言ということで笑ってご容赦頂ければ幸いです。           頓首

2020年02月号

〈児童の声〉

楽山寮 H・石上館 R・掬泉寮 S

「一時帰省を通して」

楽山寮 卒一 H 

 僕は、この一時帰省で母や妹と再会して一緒に過ごして、久しぶりに会った小さな妹が少し大きくなっていて、言葉もよくしゃべれるようになっていて、僕が「私のこと覚えているかい?」と聞くと、ニッコリ笑って「ヒュウマ兄ちゃん!」とはっきりとこたえてくれたので、よく覚えててくれたなと感動しました。 

 その後に、母とも再会して僕がつい言ってしまった「少し太った?」が再会した時の第一声になってしまいました。その後、母に少しこづかれました。

 その後で、泊まる部屋に荷物を置いて、家族全員でお出掛けしにいきました。まず最初にドンキホーテにいって僕と弟の使う物や持って帰る物などを買いに行きました。ちなみに僕は、置き時計と受験に必要な腕時計を買いました。

 そして次は、妹が「おなかへったー」といったので昼食を食べに行くことにして、回転ずしに行きました。その回転ずし屋で久し振りに家族揃っての食事の席で、みんなワイワイ楽しく話している中で、僕と弟が軽いふざけ合いをしていた所を妹が見てまねをして、母に笑われながら「変なこと覚えたらどうするの」と軽くこづかれて、僕は『あぁ、家族っていいな』と思いました。

 実は、僕は生まれて初めて鯨の肉を食べました。その時僕は、世の中にこんなうめぇもんがあるなんて初めて知りました。そして、高かった鯨のお肉を食べさせてくれた母の愛情を感じました。

 食事の後、僕や弟の欲しかったマンガや小説などを買ってもらいました。

 そして、この帰省を通じて、食事や買い物、何気ないきょうだいや母との会話を通じて家族のふれあいの楽しさ、母のあたたかい愛情を感じました。早く卒業し、家族皆揃って暮らしたいと強く思いました。

「残留期間」

石上館 中一 R

 

 僕は、十二月二日、月曜日に、北海道家庭学校に入所しました。帰省が十二月二十六、木曜日に開始で、一ヶ月がたっていないので、帰省ができず、学校に残りました。

 残留初日。残留の初日は、特に行事などはなく先生が人狼を持ってきて、みんなで遊びました。

 七日目。学校に来て、一ヶ月がたちました。七日目の行事は、スケートをしました。スケートは人生初めてしてとても楽しかったです。

 最初は、すべれなく、友達にこう言われました。「あせらない、スキーのスケーティングと同じ」と言ってくれて、スキーと同じスケーティングをしたらうまくいきました。友達にはありがたく思っています。

 十日目。十日目は、ビリヤードをしました。ビリヤードは、初めてやるのでできるかな?と思いましたけれど、けっこうできました。友達と勝負したら、五四点を取って勝ちました。勝利した喜びは、今でもわすれません。

 残留は、二週間でしたけれどカーリング、カラオケ、スキー、など色々な行事があり、残留の行事を考えてくれた先生にありがたく思っています。この残留は、二度とわすれない思いでです。

「ひとむれ理事になって」

楽山寮 中一 S

 

 僕は、三学期になって初めて理事を任されました。最初に先生に言われた時は、自分にできるのかなと思いました。声を出す機会も多いので大きい声が出るかなどと心配でした。

 今まで他の人のやっているのを見たり聞いたりして、初めて朝の朝礼であいさつをすると全然声が聞こえないと沢山の人に言われました。これからは、もっと声の音量をあげて周りの聞く人に聞こえるようにしたいです。

 他にも、月目標が決まって発表する時、反省の時、レクリエーションの体操の時など沢山声を出して発表する事が増えるので声が小さくて他の人に、何をやっている、何と言っているかなどちゃんと伝わるようにしたいです。

 他にも、理事になってからできた課題が幾つかあります。まず一つ目は話し合いなどの時に、意見があまり出せないことです。僕は、意見を出すことが苦手なので、これからの三学期の理事会などでも困るので、もっとたくさんの意見が考えられるようにしたいです。意見を出す機会は、理事会以外にもこの先の将来でも必要になってくると思うので、今のうちに身に付けておきたいです。

 二つ目は、周りの人のお手本になるということです。今までも周りの人のお手本になれるように生活していましたが、理事になってからさらに、周りの人に良い手本となったり、間違ったことをやっていたら「違うよ、ダメだよ」などと声をかけれるように生活する意識が少し高まった気がします。

 これからの三学期、周りの人が困っていたりしたら出来る限り役立てるようにしたいです。理事を任せてくれた先生の期待にも、応えられるように生活したいです。