このコーナーでは、家庭学校の月毎の機関誌である『ひとむれ』から一部を抜粋して掲載しています(毎月上旬頃更新予定です)。
 職員が、家庭学校を通じて感じたことや伝えたいことを表しています。是非、ご感想をお聞かせください。
※都合により『ひとむれ』本誌と内容が異なる場合がございます。ご了承下さい。


2019年08月号

「家庭学校夏本番」

校長 仁原正幹

 七月後半から日本列島を包み込んだ熱波は北端のオホーツク地方にも及びました。気温に加え湿度も高く、家庭学校の森に住むようになって六年目の私ですが、最も蒸し暑い夏を過ごしています。

 例年なら真夏の行事であっても屋外開催の場合は肌寒さが気になるものですが、今年の「相撲大会」と「釣り遠足」については、お陰様で好天に恵まれ(若干恵まれ過ぎの感もありましたが……)、大いに盛り上がりました。

 熱中症の不安も頭を掠めましたが、家庭学校の日課の中で鍛えられている子ども達には心配無用でした。「能(よ)く働き、能く食べ、能く眠る」という「三能主義」による勤勉で規則正しく健康的な生活と良好な環境に身を置く中で、子ども達は心身ともに逞しく成長しています。入所時に百キロ超の肥満体だった中学生も、反対に小柄で痩せ細っていた中学生も、家庭学校での健康的な生活の中で皆筋肉質の引き締まった体型に変身し、各人各様少しずつではありますが着実に成長し、明るく元気になっているのです。

 今年度は当初から児童の入所が相次ぎ、賑やかで活気のある一学期でした。学期毎の三賞(作業賞・学業賞・努力賞)の受賞者も大勢いて、二十九日の望の岡分校と中卒クラスの終業式の中で表彰しました。この号がお手許に届く頃には、多くの子ども達が三賞の賞状や自らが丹精した野菜などを手土産にして夏季一時帰省で故郷に戻っているはずです。

 終業式では、家庭学校での集団生活の中で皆それぞれが自分の役割を果たそうと懸命に努力したことを称えました。さらには、長い夏休みの間には帰省するしないに拘わらず時間が十分にあるので、静かに自分のことを考える絶好のチャンスであることを話しました。休み中であっても「三能主義」を遵守しながらプラスワンの「能く考える」生活を心がけ、家庭学校に来た意味をしっかりと考えて今一度自分を見つめ直してほしい、そして、将来のこともじっくりと考えてほしいと、校長としての思いを伝えました。

 北海道家庭学校は歴史と伝統を大切にしており、毎年盛夏に慰霊祭と墓参を行っています。今年も八月一日の朝七時から寮理事の生徒六人と職員十人とで遠軽町内の学田墓地に出向きました。早朝からの強い陽射しの下、額に汗を滲ませながら約一時間かけて旧職員のお墓十基と生徒三人の合同墓を巡り参拝しました。午後二時からは礼拝堂で慰霊祭を行いました。いずれも園芸班栽培の花を献花に使いましたが、今年もまた大先輩の齋藤益晴先生ご丹精の花に助けられました。

2019年08月号

中卒クラス再開

児童自立支援専門員 木元勤

 昨年8月に唯一の中卒の生徒が卒業し、休業状態だったクラスが4月から再開されました。1学期が終わろうとしている今、この3ヶ月半を振り返ります。

 昨年度、中3のみんなと迎えた3月の卒業式。新天地に旅立つ仲間を見送るO君の心境に変化が起こったようです。進学の気持ちが芽生え、徐々に大きくなっていったようです。そんな中で、4月8日の始業式。O君にとっては複雑な感情を抱いてのスタートだったと思います。その日のホームルーム。中卒クラスでの心構えと役割を説明した時も、O君はきちんと顔を上げ、真摯に私の話を聞いていました。初めてじっくり、マンツーマンでいろいろな話もしました。O君は自分の長所をよく知っているようで、自己分析の正しさは、数日で何となく認めざるを得ない気がしました。その気持ちが今も変わっていないということは、かなり正直な部分を見せてくれているのかなと思っています。求めるものは、4月再開のときから話しています。見る人が困らないように字を丁寧に書くこと。これは、仁原校長先生も心配していたことで、再開の前話し合っていた事です。書道と国語の授業を担当して頂いている栄先生とも話し合い、重点課題として共通認識を持ちました。もう一つは、外に出て中卒生にしかできない仕事を喜んでやること。始まった当初、予定を伝えるとまず「やるんですか?」と必ず否定的な一言がありました。言ってみるだけで結局はやるのです。どうせやるのだから「ハイ!」と気持ち良くやるように話すと「千葉寮長先生にも同じことを言われています。」と話してくれました。最近はそれを言わなくなりましたが、態度にチラッと見せる時が気になります。根は素直で、争い事は好まず、大人とも普通の対話ができるO君です。この2つだけは2学期以降も言い続けます。

 ここでの生活はO君にとって必ずプラスになっていると信じています。まず、O君を応援してくれている人がなんと多いことか。神谷教頭先生が授業の様子を温かい目でいつも覗いてくれます。分校の先生も時々気にして見に来てくれます。廊下をO君が歩いている時も分校の先生方みんなが声をかけてくれます。分校の行事である参観日にも里見校長先生、竹内校長先生が必ず中卒教室に入って、慈愛のこもった目で優しく「頑張ってるナ!」と見てくれます。これらのことは事あるごとに二人で幸せなことだねと話しています。これだけ多くの人が応援してくれているのだから心配するな!大丈夫!

家庭学校の特長を生かした教室が中卒クラスだとずっと信じています。谷校長先生から時間講師を依頼されてから長く関わることができたことに感謝します。また、当初は困りましたが「先生がやり易いように自由にやって下さい。」と言われたことに甘えて今日まで任せてくれた歴代の校長先生、部長先生、寮長先生に感謝です。

2019年08月号

望の岡分校に赴任して

教諭 佐藤修司

 四月の人事異動で紋別市立渚滑小学校から参りました。望の岡分校に赴任して一学期が終了しました。赴任する前には、新しい職場、新しく出会う生徒のみなさんとうまくやっていけるかどうか、はじめて経験する一時間の通勤など不安な気持ちを持ちながら、四月を迎えました。

 四月一日に赴任しましたが、家庭学校、分校の職員の皆さんはとても親切に接してくれ、初めて会う人ばかりなのに、すぐに仲間入りさせてもらえたという感じで不安は半減しました。

 そして、新学期が始まり児童・生徒のみなさんに会うことができました。元気で、挨拶もきちんとできていて、そして優しい心を持った児童・生徒たちばかりで、私の不安はほぼなくなりました。(残りは、冬道の通勤ぐらいです‥‥。)

 私は家庭学校のことがくわしくわかりませんでしたので、いろいろな疑問がたくさんありました。作業班学習のこと、家庭学校の歴史、ルールなど児童・生徒のみなさんがいろいろと教えてくれました。今でも児童・生徒のみなさんから教えてもらいながら毎日を過ごしています。

 四月からの毎日は、二十数年の教員生活では味わえなかった体験がいっぱいです。特に、週三回の午後の作業班活動では、校内管理班の活動を一緒に行わせていただいていますが、滅多に着ない「作業服」を着て、今までに見たことも無いような道具と経験したことも無い活動ばかりです。この年でも、新しい経験や発見ができる日々を楽しんでいきたいと思います。

 一学期だけでも「花見の会」や「運動会」「釣り遠足」「相撲大会」など、今までに勤務してきた学校では体験できないような行事を、児童・生徒のみなさんと一緒に活動することができました。そしてみなさんは、足をけがしている私に「大丈夫ですか?」と気遣ってくれる優しさと、真剣に一生懸命に取り組んでいる姿を見せてくれました。これからの家庭学校の生活も、その後の生活でもみなさんがもっているその優しさ・真剣さ・一生懸命さを生かして活動してくれることと思います。

 まだまだ力不足・経験不足で皆さんにご迷惑をかけることも多くあると思いますが、児童・生徒のみなさんと自然豊かなこの望の岡で一緒にたくさんのことを学び、微力ながら子どもたちの成長の一助になれるように頑張っていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

2019年08月号

この学校で感じたこと

教諭 増田英雄

 家庭学校に来て感じたことは、「環境の大切さ」です。家庭学校という新しい環境で、新しい役割が与えられ、生徒たちは自分の価値を変えていきます。環境と一口に言っても、様々な要素によって作られているので、一概にこういう環境がいいとは言えませんが、家庭学校の環境は「ときに優しく、ときに厳しく、そして温かい」、そんな環境の中で生徒は自分に向き合っていきます。よく耳にする「環境が人をつくる」です。自分に向き合えずに、文句を言ってマイナス発言を繰り返せば、何も進みません。一つでも多くのことを学び巣立つために、この恵まれた環境の中で、誰かのせいにするのではなく、自分の生き方在り方に向き合う努力を生徒はしています。

 この学校で初めて生徒とあったのは、「こんにちは」と大きな声で挨拶をしてくれた犬の散歩をするN君でした。一度も会ったことのない人に自分から挨拶できる姿に、清々しい思いをしたことを覚えています。そんな生徒と今は楽しく勉強しています。ある日ある授業の中で、数学のよさに触れ「数学ってすげー」と言った生徒がいました。その発言を褒めると、3年生では「数学ってすげー」が飛び交うようになりました。学ぶ意欲のもとは、「楽しい」と思う気持ちだと思います。もし、本当の数学の楽しさを感じて勉強できたなら、幸せなことですね。「この学校にきて勉強がわかるようになった。」と言ってくれる生徒もいて、とても嬉しい気持ちになりました。私の役割は、数学を通して生徒に寄り添い学ぶことの楽しさを伝えることと、生きていくうえで本当に大切なことは何かを考えさせることだと思っています。家庭学校の理念を大切にしながら、学びたいと思う生徒の力になりたいと思います。  

 家庭学校には毎週3回作業班学習の時間があります。5つの班に分かれて作業を行います。私は「山林班」に所属しています。初回は敷地内の山に行き、木を倒し、運べる大きさに切断し、枝を払い、トラックに運ぶという作業を行いました。山の中ですから当然足場は悪く、ただ歩くのもままならない中、想像を超えた重さの丸太を運ぶ作業に汗が止まりませんでした。しかし、そんな中ヒョイヒョイと重たい丸太を運ぶ生徒がいるのです。懸命に真似して何とか頑張っても中々体が思うように動きません。自然の中でたくさんの汗を流し、ひた向きに作業に取り組む生徒の姿から、生徒の思いや指導している先生方の強い思いを感じました。作業班学習以外にもこの学校ならではの行事がたくさんあり、その中で生徒たちが個性を発揮します。1学期は花見の会、年2回のマラソン大会、相撲大会、釣り遠足など他の学校では経験できない行事が続きました。ときに見せる無邪気な顔や、無我夢中に取り組む姿に生徒の本質の部分に触れた気がしました。

 「環境は人をつくる。その環境は人がつくる」。私自身たくさんの人に支えられています。支えられるだけでなく、私もよい環境をつくる一人になる努力を続けたいと思います。

2019年08月号

〈児童の声〉

石上館 中一H・ 掬泉寮 小三A

「相撲大会の自分の思い出」

石上館 中一 H 

 相撲大会は、みんなも自分もたのしく、くいのない思い出になったと思うし、負けたくやしさはバネにして、これからもがんばっていこうと思います。

 ぼくは、相撲大会で、とてもうれしいことがありました。それは、中二の人で、強い人とあたっていつもの練習では負けていたのに、なんと勝ったので、とてもうれしいのと、もうしわけなさがものすごくありました。なぜもうしわけなさがあったかというと、最初は、「勝てる!!」と思っていたのが勝てなくて、練習のときちょっとイラついた態度をとっていたからです。

 相撲大会は、みんなに応えんもされて、ぼくはとても勇気が出てきてとてもうれしかったし、とてもいい思い出づくりができたと思います。

 ぼくにはまだまだ課題というものがあるのでそれもがんばりつつ色々とたのしんで、気楽に過ごしていきたいです。

  

「つり遠足」

掬泉寮 小三 A 

 きょうぼくは、つり遠足に行きました。それでついたらまずテントをかぶせてつりのじゅんびをしました。そして、ぶどう虫をもって、つりのはりにさしました。なのでそれがかわいそうでした。そしてこれがヤマメのえさなんだと思って、ヤマメがつれるんだなと思いました。そしてなかなかつれないと思ったのでせんせいにききました。そしてそのつりのはりが大きいのでなかなかつれなかったとまきせんせいがいっていました。そしてまきせんせいがちいさいはりをつけてくれました。これが大きいままだったら、もうぼくはつれなかったと思いました。そしてかえてもらったのでまきせんせいからなげるほうほうとつるほうほうをおしえてもらえました。そしておしえてもらってつよくゆれたらゆっくりひくといわれました。そしてゆれました。ゆっくりひいてみると、さかなをつっていました。それでつれてよろこびました。そしてだんだんうまくなってきて3びきつれました。そして、さいごにバーベキューをしました。ごはんとジンギスカンがおいしかったです。つけものととうもろこしでたべたと思います。おいしかったです。また食べたいです。そしてさいごにヤマメをやいてたべました。ヤマメに感謝しています。そしてさいごに1ぴきつれました。そしてさいごにごうけいをあわせて3びきになりました。そしてさいごにかたづけをしてかえりました。たのしかったのでまたらいねんぼくがいたらやりたいです。