ひとむれ

  このコーナーでは、家庭学校の月毎の機関誌である『ひとむれ』から一部を抜粋して掲載しています(毎月上旬頃更新予定です)。   職員が、家庭学校を通じて感じたことや伝えたいことを表しています。是非、ご感想をお聞かせください。

※都合により『ひとむれ』本誌と内容が異なる場合がございます。ご了承下さい。
2019年02月号

「人の気持ちがわかる人になろう」

校長 仁原正幹

 北海道家庭学校の森にも本格的な冬が到来しています。マイナス二十度以下にまで冷え込む朝もありますが、そんな日の日中は明るい陽射しの下で気温が急上昇します。オホーツクブルーの空の下、木々も建物も神社山ゲレンデも輝きを増し、子ども達が元気に雪遊びに興じます。

 この冬は今のところ雪が少なく、除雪の面では助かっているのですが、雪像造りには良質な雪が足りません。そのため二月八日に予定していた雪像コンクールを一週間延期しました。各寮の前庭に寮生の人数分の大きな雪の塊が必要だからです。縦横高さ各二メートルの木製コンパネで囲った中に雪を詰め込んで大きなサイコロ状の雪塊を作り、それを各人が十日程かけて一体の雪像に仕上げます。

 スキー学習は今年もまた自衛隊遠軽駐屯地の隊員さんに熱心なご指導をいただきました。強風が吹き荒れ、時折地吹雪模様となる日もありましたが、子ども達も先生方も寒さと懸命に闘っていました。年末に帯広児相から入所した新入生三人はスキー初体験でしたが、先輩方に倣いながら見る見る力を付けています。

 さて、いつものことですが、家庭学校内の寮や教室では日々小競り合いが起こります。時には暴言・暴力に発展することもあり、新しい顔ぶれも増えたことから、定番の「人の気持ちがわかる人になろう」という話を、新年最初の校長講話でお話ししました。以下、その概要です。

    ○

 皆さんは家庭学校で学ぶこと、身につけることの中で、何が一番大事なことだと思いますか。

 望の岡分校の授業に真剣に臨んで勉強の遅れを取り戻す。その結果、学業成績が伸びて、希望する高校に進学する。これ大事なことですね。それから、寮生活で生活のリズムが身について、早寝早起きができるようになる。掃除や洗濯、片付けものなどを独りできちんとできるようになる。これも大事なことです。さらには、作業班学習や朝作業・夕作業に真面目に取り組んで草刈りや畑おこしや除雪などの根気の要る仕事も最後までやり通せるようになる。これまた大事なことです。

どれもこれもみんな大事なことですが、それらをぜーんぶ合わせたくらいに大事なことがもう一つあると、私は思っています。何だかわかりますか。それは「人の気持ちがわかる人になる」ということです。相手の身になって考えてみる、相手の気持ちを推し量ってみる、そういうことができるようになることです。

 心ない一言で相手がどんなに傷つくだろう、自分に対してどんな感情を抱くだろうということが想像できれば、うかつなことは言えないはずです。ついつい、カーッとなって、むしゃくしゃして、あるいはからかってやろうと思って、相手に酷いことを言う。そういう行為は、人としてとても恥ずかしいことだと思います。早くそういう未熟な段階を卒業してほしいと思い、私は繰り返し繰り返し「人の気持ちがわかる人になろう」と、皆さんに語りかけてきました。

 人の気持ちがわからなくては社会で自立して生きていけません。自分の人生とはいっても、人生は自分一人で完結するものではなく、常に周囲の人、社会との関係のもとに成り立っているからです。

また、人を傷つけるようなことを言わないことはもちろん大事だし、常に気をつけていなければならない当たり前のことですが、実は人間関係の問題はそれだけでは解決しません。自分がいくら気をつけていても、残念ながら世の中には未熟な人もいます。傷つくようなこと、バカにするようなこと、人格を否定するようなことを言う人もいるものです。そのときに一々腹を立てて反応してしまい、言い返したり、口喧嘩をしていたら、どうなるでしょうか。人間関係がギクシャクして、壊れてしまいます。いくら勉強をきちんとしていても、一人前に仕事ができても、人間関係がうまくできなければ、学校も仕事も続けられなくなります。

 では、どうするか。秘訣を教えます。傷つくようなこと、バカにするようなこと、人格を否定するようなことを言われたときには、そこで一呼吸置いて、あー、この人はまだまだ未熟なんだな、だからこんなバカなことを言ってるんだ、かわいそうな人だなあ……と思ってください。そして、相手にしないこと、聞き流すこと、無視することです。これができれば立派なものです。

 でも、皆さんは今まで散々苦労してわかっていると思いますが、これってなかなか難しいことですよね。そのための練習の場、修行の場が、家庭学校です。家庭学校にいる間は、腹が立ったり、イライラしたり、キレそうになったときに、家庭学校の先生、望の岡分校の先生が話を聞いてくれ、優しく注意をしてくれます。皆さんは家庭学校で修練を積んで、随分と我慢強くなり、一歩も二歩も三歩も賢くなってきているはずです。まだ新入生期間の人でも、毎日の生活の中で少しずつ学んできているはずです。

 家庭学校で長く生活している人は、もうそのことをしっかりと身につけているはずです。自信を持って新しい道に歩を進めてください。ただし、人間は忘れやすいものです。ついつい慢心してしまうものです。家庭学校にいる間も社会に出てからも、時々「人の気持ちがわかる人になろう」という言葉を思い出して自分を律してください。そうして、みんなから愛され、慕われる人になって、明るく楽しく充実した人生を歩んでください。

2019年02月号

家庭学校の食事

栄養士 和田希望

 日々の食事はもちろん、食材、食品、マナー等、「食」は、生きていく上で欠かせないものだと私は思っています。家庭学校では、その「食」についてとても力を入れているんだなぁ、と働いていて感じます。

 家庭学校の食事で使用する食材は、家庭学校で作っている・採れているものが多いです。給食棟では、野菜は蔬菜班と各寮、味噌は校内管理班、牛乳は酪農班のものを主に使用しているので、それぞれの班で生徒が「食」に関わっています。日々の食事の中で、自分が関わった野菜や食品が使われていると、喜びを感じると思います。また、周りから「おいしい」と言ってもらえると、さらに嬉しさや達成感を得ることが出来ると思います。その時の気持ちや感情を大切にしてほしいと思っています。

 また、家庭学校で作っている食材の生産者・製造者が先生や生徒であるように、市場に出回っている食材や食品も、必ず生産者や製造者がいます。作っている場所が違っても、作っているものに対する気持ちは同じだと思います。家庭学校で過ごしている子ども達は、その作業の大変さや嬉しさを知っているのではないかと思います。知っているからこそ、いつまでも感謝の気持ちを忘れずに持っていて頂きたいと思っています。

 家庭学校では、朝食夕食は各寮で、昼食は給食棟に集まって、コミュニケーションを取りながら食事をしています。この「みんなで食事をする」ということを「共食」と言います。「共食」の良いところは、食事を通じてコミュニケーションをとることが出来るところや、食事を作ってくれている人への感謝の気持ちを育むことが出来るところ、食事のマナーを身に付けることが出来ることなど、良いところがたくさんあるので、私はこの「共食」はとても大切なことだと思っています。それとは逆の言葉で「孤食」という言葉があります。「弧食」とは、ひとりでの寂しい食事のことを言います。この「弧食」が与える影響は、栄養の偏りだけでなく、食事の時間を楽しく感じることが出来ないことや、コミュニケーションの欠如から、社会性や協調性のない人間になってしまう恐れがあります。 食事は、ただ体に栄養を与えるためだけではなく、みんなとコミュニケーションを取り、食べることの大切さや食事のマナーを身に付けることが出来る場だと思っています。いつも提供している食事を「おいしい」と言って頂けて、この仕事のやりがいを感じています。毎日ある食事の時間を、みなさんに楽しいと思ってもらえること、食材のことや調理方法のことなど、どんなことでも良いので少しでも、「食」に興味を持ち知ってもらいたいと思っています。

そして、今は毎日毎食作ってくれる人がいて、決められた食事を食べています。でも、社会に出たとき、自分で食材を選び生活していかなくてはならない時が来ると思います。そんな時に、将来自分で食材を判別し自立した食生活を営めるようになる食育も必要だと感じています。

食育に対して、やってみたいことや伝えたいことはたくさんありますが、思うように進まない時や、発信する勇気がないことがあります。ですが、出来ることからやってみようと思います。

2019年02月号

トラウマインフォームドケアを学ぶ

心理士 姜京任

 一月十四日に札幌で開催された「児童福祉施設心理職員経験交流研修会」に鬼頭主幹と大里指導員、私の三人が参加しました。

 今回の研修のテーマは「トラウマイン

フォームドケアを学ぶ」でした。

 大阪大学大学院人間科学研究科の野坂先生、愛育研究所の山本先生のお二人から貴重なお話を伺うことが出来ました。

 子どもへの対応におけるトラウマの「再演」が被虐待児との関わりの中で職員の無力感を高め、職員の恐れ・怯えを引き起こす可能性が高いとのこと。不適応を起こしてしまう子どもの対応で疲弊する職員が少なくない現場の状況から、改めて考えさせられた点でした。

 トラウマインフォームドケアの視点から子どもを理解していくことは不適切な環境で育てられた子どもの自立を促す役割を担う職員にとってより円滑な関わりをつくる一つの方法であると考えられます。実際に現場ではトラウマの認識をしないで接する職員は少ないと思いますが児童自立支援施設は決まった日課に乗せることで精一杯になってしまう傾向が強く、トラウマの「再演」が表面的な問題行動として捉えられることもあります。外から見える問題行動は過去の逆境体験やトラウマ・喪失による慢性的な過覚醒であると捉えることで、問題行動のみクローズアップしてしまう傾向から、なぜ子どもが問題行動に走ったのか、何を話したいのかと向き合うスタンスに変えていくことに繋がると思いました。

 『トラウマの再演は無意識に受けたトラウマと類似した行動やテーマを繰り返す。①自分がされたことを他者にする、②相手の言動をすべて「攻撃・非難」と捉える、③対人関係は「強いか弱いか」「勝つか負けるか」でしかなく、支配する側される側に身を置く、④「愛される」と心地悪く感じる反面「もっと愛されたい」と渇望する(際限のない要求)。その流れから回復するには基盤を安心・安全感、自己肯定感において、いつでもどこでもリラックスする方法を教えることや感情を表現できるようになること、また、自分を励ます考えを増やすこと』とのこと。心理士としては、心理教育や面接を通して感情を表現できるようになることやリラックスする方法などを子どもと一緒に考える作業があるのでケアの一貫としてより責任を感じる研修でした。

 トラウマケアは安心・安全感を感じることで治療に繋がるので、児童自立施設は治療施設として十分その役割を果たせると思います。子どもが自分の感情に気づき、表現できる場を設けることが心の回復に繋がる第一歩であることを施設全体に伝える役割をはじめ、無力感に陥りやすい生活支援の場で苦労している職員間の架け橋になることも心理士としての役割だと再認識しました。

2019年02月号

〈児童の声〉

石上館 中三H・楽山寮 中二S・掬泉寮 中一K

「ひとむれ理事長になって」

石上館 中三 H

 僕は、ひとむれ理事長になりました。まず、理事長となったからにはしっかりと役割がこなせるようにしていきたいと思います。

 最初に、理事長となってからはこれまでのひとむれと変わりないのですが、あいさつがあったり生徒代表ということもありますのでそこはしっかりとできたらいいなと思っています。そして短い期間ですが終わるときにはしっかりやりとげたという達成感が感じられるようなものにしたいです。

 次に三学期には、誕生会でのあいさつはもちろんですがスキー学習や雪像展といったものでの活動もあるのでしっかりやらせていただきたいと思います。そして毎月最終日の時にする月目標の反省と次の目標決めです。何度かしていますが、各寮でどうだったかや本館での様子などを通して目標を決めて、どんな目標名にするかもしっかりと決めていきたいと思います。

 最後に、これからは皆のサポートをしつつ、理事長らしさをしっかりお見せできるよう取り組めたらと思います。

「理事をまかされて」

楽山寮 中二 S

 僕は、理事をまかされたのはこれで二回目です。一回目は、そんなにできなかったです。だから、二回目は、理事としてできるかぎり理事長や副理事長の役に立てるようにしようと思いました。そう思うきっかけみたいなのが二つあります。

 一つ目のきっかけは、理事になったら、目標をたてるとか色々仕事があって、目標のことを一番に実行しなければならないのが理事の人です。他の理事の人は出来ているのに僕だけ出来ていなかったら足手まといになってしまうから、役に立てるようにしようと思ったからです。

 二つ目の理由は、冬の帰省でお母さんと話をしたことです。お母さんとは、僕の問題のこととかを話しました。話をして気分が楽になりました。それで、これまでのことを無かったことにはできないけれど僕の中でいったんリセットしました。それで、がんばろうと思って、同じく理事もがんばろうと思ったからです。

 これらのきっかけみたいなことで、今がんばろうと思っています。途中でやめさせられないような生活をします。

「二回目のロックバレー」

掬泉寮 中一 K

 先日は、ロックバレーで授業と大会を行いました。ただ、今年は雪が少なく、ロックバレーに行けないと心配していましたが、滑れないコースがあるだけで、滑ることができました。けれども、表面がちょっと見えるコースもありました。 午前は、チャンピオンコースを主に、小回りと大回り、レールターンや体の使い方、横滑りの練習をしました。ですが、チャンピオンは斜面が三十三度もあり、頭の中には、楽しいが十パーセント、恐怖九十パーセントと、恐怖に支配され、いつも通りの滑りは出せませんでしたが、最後に滑った時には、恐怖が三十パーセントに下がり、楽しく滑ることができました。

 午後は、大回転の大会をしました。初めは一位をとる自信はありませんでした。ですが、自衛隊の荒川さんのアドバイスと、他の人の滑り方を見て、段々上がっていきました。なぜ上がったかというと、一班以外の生徒のほとんどが、滑っている最中にストックで何回もこぐからです。そうするとストックでつく分、ブレーキがかかり、遅くなってしまうからです。そこで僕は、出だしだけこいで、残りは体勢を低くし、空気てい抗を減らして滑ることにより、他の人と一秒以上速くゴールできました。大会の結果では、中一・中二の部で一位。また、個人タイムは、総合一位でした。今までとってきた一位より、とても嬉しかったです。

 残りの回転と滑降でも、総合一位をとれるように、頑張りたいです。