このコーナーでは、家庭学校の月毎の機関誌である『ひとむれ』から一部を抜粋して掲載しています(毎月上旬頃更新予定です)。
 職員が、家庭学校を通じて感じたことや伝えたいことを表しています。是非、ご感想をお聞かせください。
※都合により『ひとむれ』本誌と内容が異なる場合がございます。ご了承下さい。


2012年06月号

花の季節を迎えて

校長 熱田洋子

 遠軽も五月早々に桜が咲き出して、例年になく早い花見を楽しむことができました。桜を探しながら校内を歩いていると、足元には見てくれるのを待っているかのように山野草が広がり、青いエゾエンゴサクに次いで白いオオバナノエンレイソウが花の盛りです。ここは山野草の宝庫で、日々自然の美しさに惹きつけられ豊かな気持ちになります。幸いなことに、町の植物やチョウの愛好家が校内も探索してくださるので、そのうち学校の自然を紹介する案内板を新しくし、ガイドもできるようにしたいと思います。

 五月三日憲法記念日は講話をして憲法の意義を生徒とともに学ぶ良い機会としています。今回は、憲法をもつということについて、また、日本国憲法の三大原理の一つが基本的人権の尊重であり、「個人の尊重」(日本国憲法第十三条)という考え方から派生してきていることを再認識することとなりました。個人の尊重とは、一人ひとりがそれぞれにかけがいのない存在であることを認め合って一人ひとりを大事にすること、それは、一人ひとりが違う存在であることを認め合い、その違いを尊重することであると思います。家庭学校のように集団生活の場においては、お互いを個人として尊重するということから一定のルールが必要とされるわけですから、自分自身も他の人も一人のかけがいのない存在として尊重するという観点から自分の好き勝手にはできない場合もある、ということを理解できるようになってほしいと願っています。

これは聖書のみ言葉「隣人を自分のように愛しなさい」(マタイによる福音書二二章三九節)に通じるものです。自分を愛するとは、わがままになることではなく、自分に与えられた素晴らしいいのちを感謝して精一杯生きること、周りの人も同じように神さまから造られた大切な人であることを覚えて仲良く生活して欲しいと願って礼拝で話をしたことがあります。日本国憲法の最も基本にある精神、それは家庭学校のキリスト教の精神に通ずるものであり、み言葉を思い生徒の心の成長を祈り続けています。

 子どもの日に因んで連休には「校長杯スポーツ大会」が行われます。今年は、まずまずの天気で風にそよぐ鯉のぼりも応援する中、予定どおり一日目フットサル・バスケットボウル、二日目ソフトボウルに、小学生から高校生まで約二〇名と職員も加わり、分校の先生方の応援もいただきましたが、最後まで一人もあきらめることなくいい汗をかいて頑張りました。この時は三寮の寮対抗になり、寮長を監督に、監督の指示に従ってプレーして逆転につぐ逆転の白熱した試合展開もみられました。余り得手でない生徒も監督の言うとおりにプレーしてうまくいった場面もあり、一人ひとりの頑張りとチームプレーで力を合わせること、監督の指示に従うこと、できないとあきらめずに挑戦する勇気など、たくさんのことを経験できたのではないでしょうか。それを忘れずに、日々の生活、学習・作業に生かしてもらいたいと思い、激励して閉会の言葉としました。お昼は、各寮母の心づくしのごちそうが待っていて、具だくさんの豚汁やグラウンドで炭火をおこし野趣に富んだジンギスカンでお腹いっぱいになりました。少人数でしたが盛り上がった大会になり、怪我もなく、無事に終わってよかったです。

 三日の早朝に、「北の大地の少年たち」の再々放送がありました。一つの寮の生徒と寮長の生活する様子を一年かけて取材したこの番組は好評のようで再々放送になりました。朝五時過ぎの放送でしたが、ご覧になった方が早速ご連絡をくださり、学校を訪ねても来られました。お一人は、東京で電気設備関係の仕事をしておられる方で、たまたま北見に出張して来られていて、朝テレビをご覧になって感動され、寮長に会って励ましてあげたいと、北見から車で駆けつけ、十時の憲法記念日の講話の直前に学校に到着されました。学校のことなど説明しているうちに、指笛を演奏されるとお聞きするに及んで、ちょうど生徒が集まっている時でしたので、珍しい指笛を演奏していただくことにしました。自己紹介で、少年時代に家出して東京へ出て苦学され、お仕事もご苦労が多かったようですが、ご自分で選ばれた道なので頑張ってこられたことを伺いました。指笛で「ふるさと」を演奏してくださいましたが、身体のぬくもりを感じさせる音色に思わず聞き惚れてしまいました。次回は校歌(賛美歌三八〇番の曲に家庭学校の歌詞)を演奏してくださると約束して帰られましたので楽しみにしています。

 もうお一人、当日お電話をくださった方で、どうしても来てみたいと五日、スポーツ大会が終了した直後に、おみえになりました。昭和二二年頃、生徒として半年間、家庭学校で過ごされたことがあり、その後もいろいろなことがおありになって随分とご苦労されたそうですが、いま八〇代で絵の趣味を楽しみに生活しておられる方でした。番組を見て当時を思い出して遠方から来られましたが、辺りの様子がすっかり変わっていて、禮拝堂だけがそのままでよく覚えていると懐かしそうに話されました。番組を通して家庭学校の繋がりがさらに広がり、深められたことを感謝しています。

 連休頃に雪が降ることがあると聞いていましたが、今年は、十四日「花見の会」準備の日に雪が降り積もり、当日は体育館を会場に、花見ならではのご馳走を持ち寄り、各寮と分校・職員の出し物に皆が盛り上がって賑やかな集まりになりました。お客様と一緒に楽しく過ごしたいと地域の方々にご案内し、町の教育長、教育相談でお世話になる先生、家庭学校の高校生が通う高校の教頭先生と担任の先生方もおいでくださって生徒たちを激励し、また職員とも親しくお話ししていただけたのでうれしい時になりました。来年はもっとたくさんの方々にご案内させていただきます。行事の都度、地域の皆さまにおいでいただいて家庭学校の様子をご覧になり応援してくださることがとても励みになります。どうぞよろしくお願いいたします。

2012年06月号

ごあいさつ

阿波加 忠純

 このたび、縁あって北海道家庭学校で働かせていただくことになりました。北海道職員からの派遣研修という形でありますが、家庭学校のために働くことに変わりはありません。どうぞよろしくお願いします。

 家庭学校には、今から二十一年前に初めて訪れました。養護施設(当時)への就職を希望する妻の施設見学に付き合っている折、遠軽町にある家庭学校を見学してみたいという話に、さほど強い動機もないまま同校することになりました。

 八月のある日、家庭学校の訪問を前に、太陽の丘遠軽公園に野営をしたのですが、明くる朝起きてみると、荷物をカラスに悪戯され、しばし片付けをするはめになりました。

幸いなことに管理人の方が私たちを見かけて、片付け終わったらお茶でも飲みにいらっしゃいと声をかけてくださいました。

 「どちらから。」「倶知安から着ました。」「そうですか。私は真狩の出身です。」「家庭学校を見学に行くところです。」「そうですか。僕は家庭学校で三十数年働きました。」

 お名前を伺い、家庭学校への道のりを教えていただいて別れましたが、この方が家庭学校の教務部長を務められた加藤先生だと知ったのは、それから数年後のことでした。

 加藤先生とはその後なかなかお会いする機械に恵まれなかったのですが、先日、出来上がった『ひとむれ』を持参して、二十一年目にようやくゆっくりとお話しすることができました。

 家庭学校には事前の申し込みもなく訪れたのでしたが、当日いらした川西先生(元総務部長)は快く寮内を見学させてくださり、昼食まで分けてくださりました。

 「道の職員です。」「そうですか。それなら大沼学園にいかれることはあるかもしれないですね。」こんなやりとりをしたことを覚えています。その三年後に、私(と妻)は北海道立大沼学園で生活を始めました。

 川西先生とは、その後何度か同種の施設どうしの立場でお会いし、このときの話にも何度か及んでいます。先日も、やはり『ひとむれ』を送付した後で、即座にお便りをいただきました。あらためて、おふたりの先生には不思議な形できっかけをいただいて、心から感謝申し上げます。

 予期せぬこととの出会いを偶然だと片付けてしまえばそれまでのことです。しかし、世の中には、偶然という言葉では語り尽くせない出来事があるものです。社会福祉法人を学んだこともなく、行政職員になろうと道に就職した私が、加藤・川西両先生との出会いを通じてこの世界に足を踏み入れることになったのみでなく、更にこの世界を離れて九年後に、今度は家庭学校という働きの場を与えられたことは、私にとっては偶然という言葉や、光栄だという表現では語り尽くせないことなのです。出会ったことは偶然であっても、そのことががその後も意味を持ち続けること自分が意味を持たせようとしたわけでうなくても関係が形成されること自分の意思とは別の働きを感じるのです

 しかし、自分の意志とは別にあるということは、自分にとってよいことばかり、望ましいことばかりとは限りません。実際、家庭学校の現況はかつてない入所児童数と職員数の減少に始まり、時代の要請に応えるために着手すべき課題も数多いと思われます。先ずは基本的なことを大切にしたいと思います。

 自分に力がないのではないか、何ができるだろうか、何をすべきなのか、様々な自問をする日々です。

しかし、結局は自分のことばかり考えているのです。

  主われを愛す

  主は強ければ

  われ弱くとも

  恐れはあらじ

また自分のことばかり考え出したと気がつくたびに、口ずさむことにしています。

2012年06月号

花見の会

千葉 正義

 五月十五日、毎年恒例の花見の会が行われました。過去の二年は天候に恵まれず、屋内での開催が続きました。

前日まで季節外れの降雪があったため、当日は好天に恵まれながらも、今年も体育館での実施となりました。しかし、子供たちにとっては花が観れなくても関係ないようです。寮母さんたちが手をかけて作ったおでんと太巻きを美味しそうに食べていたのが印象的でした。

 お楽しみ会では、各寮で準備してきた出し物が発表されました。先発は、開寮したばかりの石上館。四字熟語の読みと意味当てクイズで、子どもたちには少し難しかったのでしょうか、分校の栄先生が大活躍でした。

 二番手は掬泉寮で「合図でポン!」、「新聞紙の中心で愛をさけぶ」というパーティーゲームです。「新聞紙〜」は、二人一組で新聞紙の上に乗り、ジャンケンで負ける度に折りたたんでゆきます。面積が小さくなるほど密着したり、おんぶしたり、いくつものカップルが誕生しました。男同士ですが・・・

 そして平和寮。釣り好きの高橋寮長の影響か、釣り竿の糸の先におもりをつけて投げて的に当てるゲームです。ある生徒が的の真ん中に当てると、場内は大歓声!

 高校生の向陽寮は、寮生活の様子の紹介とビンゴゲーム。賞品は、寮作業で一生懸命に育てた野菜の苗です。

 トリは分校と家庭学校の職員で、AKB48の「ヘビーローテーション」です。

中心となって準備をしてくれた分校の米田先生は完璧で、本物と見間違えるほどでした。

 司会のひとむれ会理事の生徒もよくがんばりました。

また町の教育長様をはじめ、多数のご来賓の方々においでいただき、盛況のうちに終えることができました。子どもたちにとってもとても楽しい思い出になったと思います。この場を借りて厚くお礼申し上げます。