ひとむれ

  このコーナーでは、家庭学校の月毎の機関誌である『ひとむれ』から一部を抜粋して掲載しています(毎月上旬頃更新予定です)。   職員が、家庭学校を通じて感じたことや伝えたいことを表しています。是非、ご感想をお聞かせください。

※都合により『ひとむれ』本誌と内容が異なる場合がございます。ご了承下さい。
2011年01月号

新しき年に

校長 加藤正男

 あけましておめでとうございます。新しい年に新たな気持ちで進んでいきたいのです。本年もよろしくご指導ご支援願います。

 家庭学校の営みを見守っていただき、そしてご支援ご援助を頂きありがたく感謝いたします。

 今年も皆様方にとって素晴らしい年になりますよう心からお祈りいたします。

 礼拝堂の周りには雪が積もりました。周りは真っ白な世界です。静かに雪が降り積もる日があります。晴れ間が出た時の空の色は鮮やかです。スズメが低い枝のなかでにぎやかにさえずります。

 今月は神社山のスキー場を生徒とともにつくり、リフトを動かしスキー学習の開始です。昭和50年から遠軽自衛隊のスキー指導を受けています。スキーをすることが楽しくなるよう、そして冬の体力強化につながるようと各クラス六班にわけ丁寧に一週間指導を受けます。

 北海道の出身だからと言ってスキーの得意な生徒はほとんどいません。学校でスキー授業を行わない地区も多いのです。ここでスキーの基礎を丁寧に教わり、見る見るうちに上達します。

 現在生徒数は47名です。

 冬の一時帰省で33名の生徒は保護者のもとに戻って生活しています。まだ入校して間もない生徒やさまざまな事情で正月を家庭学校で暮らす生徒は14名です。

 帰省を実施するに当たっては児童相談所に対して保護者の受入れ等調査を依頼します。ある保護者は百パーセント、本人がよくなってなければ受け入れられないと主張します。地域に戻ってきたらまた問題を起こすのではないか、厳しい要求です。

 ここでの生活は、長い生徒で6、7年、短い生徒で、1年少しで家庭に戻る生徒もいます。半年や1年あるいは2年、ここの生活でかなり成長し、頑張ったから一時帰省しても絶対大丈夫とは言い切れません。しかし生徒はここに来る前の生活に戻って、決まりを守った生活に挑戦してほしいのです。家族の支えを期待して送り出すのです。一時帰省しても話すことがないなど否定的な姿勢では困るのです。この機会にこそ親子のきずなを確認し、将来のことについてじっくり話会ってほしいのです。

 ここでは新たに寮長寮母のもと新たなふるさとを作っているのですが、多くの生徒はいったん戻るところはもとの家が望ましいのです。前の家族とは距離を置いて自立を目指さざるをえない生徒もいます。

 そして私たちの生活は塀や鉄格子や、鍵などのない普通の家族生活です。寮長・寮母の小舎夫婦制の寮で生活しています。

 家庭です、家出や問題行動を繰り返し不良交友が深まってきている生徒もいます。ですからここにきて、逃げたい、元の生活に戻りたいとの思いの生徒がほとんどです。特に入校したばかりの時は、逃げることばかり考えていたと、朗読会で振り返る生徒もいます。

 開放処遇です。

 昭和48年8月29日、3人の生徒が石狩川でおぼれて亡くなりました。平成17年2月9日、一人の生徒が遠軽町からかなり山に入った丸瀬布でなくなりました。

 家庭学校に対してその都度社会的に厳しい非難が浴びせられました。施設から簡単に逃げだすことができ、生徒を死に至らしめる悲劇を起こしてその責任を家庭学校はどうとるのか。制度を見直して逃げられない施設とすべきではないか。もっと監視すべきではと。それに対して、児童自立支援施設に措置入院させる趣旨は子どもの成長のためであり、自立をめざしていくのです。開放施設のなかで育てていくという基本的な立場は変わらないのです。その決意のもと歩んできました。綱渡りの仕組みで生徒たちに向きあっていかなければならないのです。

 少年院送致の少年のなかでも開放処遇を可能にして、短い期間で処遇を行う特修短期の勧告が裁判所から出されてその勧告に沿って少年院で生活する少年もいます。そこでの少年院は開放処遇です。平成5年、私は少年院の処遇で開放処遇をさらに前進させた特修短期処遇を展開した施設・市原学園に勤めていました。土・日は少年院に泊り、月曜日から金曜日まで県立の工業高校に通っていた少年がいました。自転車でレストラン等に働きに出ていた少年もいました。

 家庭環境がしっかりして逃走の危険の少ない少年から選ばれました。

 それでも家族との宿泊面接をしたのち、逃走した少年がいました。逃走を防ぐために逃げない少年を選択していたら、その対象者が極端に減りました。かって月形学園でも特修短期の少年を預かっていたのですが、今は特修短期を対象とする男子の施設は有明高原寮と和泉学園の二施設となってしまいました。

 児童自立支援施設は少年院とは異なります。家庭環境はとても厳しいのです。虐待を受けていたり、あるいは家で居場所をなくしている生徒です。特別短期処遇施設は特別な開放施設です。他の少年院では部屋には厳重な鍵がかけられ窓からは自由に出られないよう鉄格子があります。そして周りには低いですがフェンスがあります。外での運動や農作業等はありますが、複数の職員の監視のもとです。

 児童自立支援施設は少年院とは全く異なります。子どもたちの権利が大切にされなければなりません。身体的な拘束はされないという、極端な言い方をすれば無断外出できる権利を持っています。最初は逃げることばかり考えていた生徒が、いつでも逃げようとすれば逃げられるという安堵感から、ここでの生活を頑張っていくのです。

 少年院に入る理由の一つに非行の重大性があります。身柄を拘束され、手錠をかけられ移動するという自由の剥奪にはそれなりの理由が必要です。ですから簡単には少年院送致の審判決定は出ません。

 児童自立支援施設では子どもたちを引きとめるものは寮長・寮母との信頼関係です。信頼関係を結ぶためにも、生徒を全面的に信頼するのです。監視した生活ではありません。家庭のつながりのようにここが居場所とするのです。

 そこまでにいきつくまで、さまざまなトラブルが発生します。けんかや、暴力、性的なトラブル、寮長・寮母に対する暴言や暴力、そして学校の学習場面における暴言や授業妨害・先生に対する暴行も起きます。

 それでも監視体制を強めていくのではなく、生徒と寮長・寮母そして分校の先生のきずなを強めていくことに力を入れていっています。それが児童自立支援施設のめざす方向です。

 留岡幸助先生は「・・感化教育においてはなはだ困難を感ずるは生徒の逃亡なり、ゆえにその逃亡をおそるるは当然なりといえども、看守人をおきて、これがために立番せしめ、障壁をめぐらしてこれを防ぐがごときは、教育上の策の得たるものにあらず。教育において重んずべきは信任にあり、生徒が教師を信任し、教師が生徒を信任せざるべからず。しかして信任の本体は友情にあり、友情の本質は愛なり・・・」(明治34年家庭学校留岡幸助著から)

 非行児童の心を開かせるためには塀や鉄格子、鍵があってはならないのです。

 昨年遅ればせながら石上館のトイレに簡易水洗化の設備が改修されました。まだ水洗化されていない残りの寮、平和寮・洗心寮・柏葉寮は平成23年度に改修をできるよう道に申請しております。さらに、寮を改修してもう一か寮に寮長寮母さんを迎え六か寮体制にしていきたいのです。向陽寮は高校生寮、五か寮は一般寮・一か寮は休暇寮体制で運営していくよう整備していかなくてはなりません。現在47名の生徒ですが、あと7名近くの生徒を受け入れ54名で運営できるよう整備をしたいのです。現在の寮の体制では入所を断らざるを得ない生徒が出てしまいます。体制が整えられればここで頑張って生活できる生徒が増えます。

 今年は北海道に分教場を開いて97年になります。あと3年で一世紀にわたりこの地に家庭学校が続いてきたこととなります。この歴史の歩みを前に進めていきたいのです。

2011年01月号

「平成22年度 東北北海道地区児童自立支援施設協議会職員研修会に参加して」

千葉 正義

 先日、平成22年11月25日~26日の2日間、北海道立大沼学園及びグリーンピア大沼で開催された東北・北海道地区児童自立支援施設職員研修会に参加させて頂きました。今回の研修のテーマは、「他の施設や機関と連携を図るために」であり、児童自立支援施設の性格上他の施設で処遇困難になった児童も多く、被虐待児童や発達障がい児童も増加している中、施設や機関がどのように連携を図るべきなのかというものでありました。

 11月25日、今回の研修のために前泊していた札幌からJRに乗り、大沼公園に向かいます。初めての研修会参加ということで少し緊張していましたが、同時に楽しみでもありました。特に2日目に予定されている施設の見学は、他の施設を見たことがない私にとって、大いに期待できるものです。やがて、列車は大沼公園駅に到着すると、大沼学園の職員の方に迎えて頂き、会場であるグリーンピア大沼に向かいました。会場入り後すぐに開会式となり、いよいよ私にとっての初めての職員研修がスタートしました。

 最初は、北海道児童養護施設協議会会長・高橋一彦先生の講演、「児童養護施設から見た児童自立支援施設」でした。普段、家庭学校に職を置く私は他の施設を思う時、児童自立支援施設を中心に考えがちですが、今回の高橋先生の講演では、児童養護施設側から見た児童自立支援施設のあり方や意見、また現在の児童養護施設の現状など、貴重なお話を聞かせて頂きました。家庭環境が良好でない児童自立支援施設に入所し、問題行動が改善された後児童養護施設に措置変更されるケースは家庭学校でもあることですが、児童養護施設からすると、児童自立支援施設の児童を入所させるのは悩むところがあるようです。その理由としては、互いの施設の性格上の違いがあり、規制の厳しい児童自立支援施設では問題点が改善されたように見えても、ある一定の自由が認められた児童養護施設ではまた問題行動が目立つようになってくることがあるそうです。児童養護施設と児童自立支援施設では入所する児童ももちろん違い、生活のスタイルが違うのも当然のことです。それぞれの施設の枠組みに合わせての指導や情報の交流が不可欠であると言われておりました。私は改めて日頃の指導の難しさを痛感し、また施設間で密に連携をとることの大切さを知ることができました。

 次に行われたパネルディスカッションでは、情緒障害児短期治療施設・バウムハウス家族支援課長・木本先生、児童養護施設・函館国の子寮施設長・柏倉先生、そして函館児童相談所指導援助課長・中橋先生の3名の先生方が「各施設・機関から見た児童自立支援施設に期待するものとその現状」ということをテーマにお話を頂きました。ここでも各先生方が共通して言われていたのもやはり、施設間の連携についてです。児童相談所でも対応の難しい児童が増加しており、措置変更等を行うで連携が欠かせないということでした。今回それぞれの施設の立場からの意見を聞いて感じたのは、この場合はこうするといった明確な答えではなく、施設や関係機関と連携を取り、情報を共有した上で常にその子にとって最適な処遇を探っていかなければならないということでした。情報の共有を行うには、まず子どものことを知らなければなりません。今私に出来ることは、日頃から子供達と深く関わりを待つことだと思います。

 その後、席を改め懇談会が行われました。私は家庭学校で働き始めて丸3年が経ちましたが、他の施設のことをほとんど知らない私は、色々な施設の先生方と話すことができ、とても充実した時間を過ごさせて頂くことが出来ました。また、児童福祉の世界に長く関わっておられる先生方の中には、私などより家庭学校のことを知っておられる先生方も多く、私は改めて今回の家庭学校職員として職員会に参加できる喜びを実感し、同時に新たに日々学んでいかなければならないと思いました。

 11月26日、研修会2日目の朝は全体協議で幕を開けます。各児童自立支援施設から持ち寄られた協議題を基に、全体で協議をします。各施設から持ち寄られた議題は、性的問題を抱える児童への対応であったり、以前にいた養護施設に戻れず行き場を失ってしまう児童への対応、また、リービング・ケアの重要性など多岐にわたるものであり、家庭学校でも覚えがあるというようなことも多いものでした。これに対し、各施設から報告された意見や事例は今後児童や関係機関と関わりを持つ上で参考になることも多く、家庭学校に入所している児童の未来を考える上でも十分に役に立つものとなりました。

 家庭学校では、平成22年10月1日現在で発達障がい児童数が23名(疑いも含む)、そのうち通院・投薬による治療を行っている児童が11名おります。投薬を始めると、日々の生活のマナーの向上や集団生活のルールの自覚などの効果が見られます。何より、自分がしてしまった問題行動について話し合ったり、振り返る事が出来るようになります。つまり、発達障がいを抱える子に対し、スタートラインに立たせる意味で通院・投薬によるケアを行っているのです。家庭学校のこの現状に対し、各施設に意見を伺いました。まず、各施設とも私が思っていたより通院・投薬による治療を行っている人数が少ないのが意外でした。また、入所当時は薬を服用していた児童も施設での指導を繰り返すうちに、最終的に薬を服用しなくても問題行動が改善されたという明るい事例の報告もありました。それは、それぞれの児童の特性をよく理解し、児童と徹底的に向き合った結果であり、やはり日頃から自動と良く触れあい、理解を深め、互いの信頼関係を深めていくことが重要であると再認識しました。こうして全体協議は終了しましたが、最近増えつつある発達障がい児童等対応の難しい児童との関わりについて深く考えさせられるものとなりました。

 2日間に渡って行われた職員研修もいよいよ施設見学を残すのみとなり、全体協議終了後北海道立大沼学園に向かいました。まず本館で施設についての説明を受け、寮舎・本館内の順で見学をさせて頂きました。寮舎内は明るく落ち着いた雰囲気で、壁には入所している児童達が製作した切り絵や木芸品などが飾られていましたが、どれも素晴らしい出来映えでただただ感心するばかりでした。家庭学校よりやや狭いかと思われる児童の居室は、綺麗に整頓されており、先生方の日頃のご指導の成果と、児童の充実した生活ぶりが伺えます。本館では授業が行われていました。音楽室では中学2年生の児童達が先生のピアノを囲み、大きな声で歌の練習をしていました。非常に安定していると感じたのですが、「落ち着かないときもあります」と笑っていた大沼学園の先生の言葉が印象的でした。家庭学校でも児童の感情には波があります。子供たちは成功と失敗を繰り返し、少しずつ学び、ゆっくりと時間をかけて成長していくのだろうと改めて思いました。その後、体育館や他の教室を見学しましたが、家庭学校と比べるとやはり新しく、綺麗といった印象です。その後再び集合し、今回2日間に渡った職員研修は幕を閉じました。帰りは再び大沼公園駅まで送って頂きました。

 今回、初めて職員研修会に参加させて頂きましたが、各施設の先生方から大変貴重なお話を伺い、また様々な問題について色々な意見や事例を伺うことができ、私自身大変勉強になったと感じており、感謝の気持ちでいっぱいです。対応の難しい児童の入所が増えている中、日々の関係機関との連絡・連携がいかに大切であるかを深く考えさせられるものとなりました。今後も家庭学校で児童とともに生活していくにあたり、今回研修で得たことを忘れず、また努力を惜しまず児童達と向き合い、私自身と共に成長していきたいと思っております。

 最後になりますが、今回研修に参加させて頂くにあたりお世話になりました大沼学園の先生方、また各関係者の皆様にこの場をお借りしまして深くお礼申し上げます。本当にありがとうございました。